不動産トピックス
快刀乱麻
1997.11.21 14:02
▼昔から「銀行の入るビル」というのは、オーナーにとってのステイタスだった。業種的に堅く、つぶれることはなく、世間的なイメージも良い。上階テナント誘致の上でも強力なアピール材料になる。おまけに金融機関とつながっていれば、何かの時にも頼りになると▼北海道拓殖銀行、そして三洋証券、山一証券など金融業界の相次ぐ破綻劇は、ただでさえ体力の落ちているビル業界にもさらなる暗い影を落としている。倒産や廃業、営業規模の縮小や合併、統合はこれからも進むだろう。100坪を越えるような銀行や証券会社が退去した後のテナントは、飲食業種にでも手を伸ばさない限りは、そう埋まるものでもない。関連会社を含めラバ、その影響は中小ビルにも及ぶ。かつての優良テナントを抱えるオーナーは、戦々恐々と株価や格付けの推移を見守っている▼もう一つ、金融機関の苦境は不動産流動化の大きな阻害原因にもなっている。例えば鑑定評価で15億円程度のビルがあるとする。世間ではこの機に自社ビルを手に入れたいという企業もあり、仮にそんな会社がこのビルを30億円で買いたいとする。オーナーは是非とも売りたい。しかし銀行はノーと言う。なぜなら銀行はビル建設費としてオーナーに100億円以上を融資しているから▼複雑に絡み合った悪循環が、今なお都市のあちこちで進行している。法律、税制面を含めて、ビル事業を本来の姿に戻すための抜本的対策が求められている。