週刊ビル経営・今週の注目記事
毎週月曜日更新
大成建設 省エネ対策にオフピーク空調を開発 夜間電力利用でビル全体を冷却
1997.03.21 14:49
大成建設(東京都新宿区)では、この程、夜間電力によってビルを冷やすオフピーク空調を開発した。昨今における地球環境重視と、省エネルギー志向の高まりから、大手ゼネコン中心に様々なシステムが開発されているが、その一つでもある、このユニークなシステムを紹介する。
大成建設が開発したこのシステムは、中空の鉄筋コンクリート床(スラブ)を夜間に冷却することで、昼間の冷房運転を節約するもの。
このシステムは、構造材である中空スラブを蓄熱媒体として活用。夜間5時間程の時間をかけ、スラブ中空部内に12℃で送風することでスラブ全体を冷却する。また、昼間は20℃で送風しても、スラブ表面で空気が冷却されるため、同じ18℃程の風が床より吹き出るという。
同社のシミュレーションによれば、5時間スラブを冷却した場合には、蓄熱効果は12時間程度は確保できるとのこと。床から天井へ空気を循環させる床吹出空調システムのため、空調対象を人が利用意する床面から2メートル程に限定出来る。
また、建物構造面では、天井面から床面までの高さを70センチメートルに圧縮することが可能。つまり階高3.7メートルのビルでは、通常天井は2.6メートルになるが、中空スラブを採用することで同じ階高で約3メートルの天井高を確保できるという訳だ。そのため、圧迫感のない快適なオフィス空間を提供することが可能。
このコンクリート蓄熱による省エネ効果は、空調機熱源容量が、従来の空調機より約13%低減することが出来るため、イニシャルコストが削減。更に昼間の3分の1という安価な深夜電力を利用するため、ランニングコストは約15%低減できるという。
電力量は夏季の冷房需要がそのピーク。特に午後3時頃の電力需要は夜間の2.3倍にも及ぶ。この昼夜の格差を解消するこのシステムは、蓄熱空調と建築構造をミックスしたものとしてユニークなものと言える。同社では今後、オフィスビルへの付加価値策として積極的に提案していく方針だ。