不動産トピックス
【3/17号・今週の最終面特集】不動産業界最新動向 賃貸マンション編
2025.03.17 10:47
賃貸レジデンスへ新規参入 トレンドは防音室 ボルテックスの賃貸マンション「VORT 沼袋 residence」
W不動産の防音室付き「Wレジデンス多摩川」賃貸レジデンス事業を自社の第三の柱事業へ
これまでオフィスビルや一部店舗も含めたテナント賃貸業をメインに行っていた不動産事業者が、賃貸マンションの事業へ参入している。今回はボルテックスとW不動産。双方オフィスビルの事業やマーケットにも知見を持つが賃貸マンションでは後発。賃貸マンションにおけるトレンドや需要も垣間見て、双方今回は防音室付きを選択した。
RC造の地上3階建て 間取りは全て2LDK
「区分所有オフィス」を主軸に資産形成コンサルティングを行っているボルテックス(東京都千代田区)。今月初旬には全11戸が防音室を備えた新築賃貸レジデンス「VORT 沼袋 residence」が完成した。
同社はこれまで東京都心部の好立地に建つ中規模クラスのオフィスビルをフロアで分割した商品「区分所有オフィス」、また区分所有オフィスの特性をほぼそのままに小口化した商品「VシェアR」を提供してきた。オフィスや一部リテールにも精通していた同社だが、2022年半ばから社内では賃貸マンションの事業も模索。マンションの開発用地を先に複数件取得し、23年4月には開発事業や用地取得等を進める総合開発一部と二部を設立。およそ2年掛けて、今回の竣工へとつなげた。
現在は一部と二部が統合。総合開発部がオフィスとレジデンスの双方で用地探しを担当している。またマンションの開発実績として今回で3棟目となる。
「VORT 沼袋 residence」は、西武新宿線「沼袋」駅から徒歩8分の朝日通りに立地する新築レジデンス。RC造の地上3階建て。延床面積は680・87㎡。間取りはすべて2LDKで、合計11戸。入居者はファミリーを想定しており、専有面積は49・62~58・59㎡。室内に対面キッチン、独立洗面台、温水洗浄便座、ユニットバス、浴室換気乾燥機、エアコン、防音扉、2重サッシ、TVモニターホン、クローゼット、シューズボックスを設置。
また共用設備として宅配ボックス、メールBOX、モニター付オートロック、駐輪場などを用意した。3階の301号室のみが広々としたバルコニー付き。開けた眺望を堪能することができる。
収益不動産で1棟販売 価格約7.5億円想定
特徴は全11戸が防音室を備えている防音賃貸物件であること。24時間楽器演奏や動画配信などが可能で、趣味だけでなくリモートワーク用のオフィスにも活用できる。事業統括本部 業務本部の石山龍貴氏は「コロナ禍を経て働き方が多様化し、在宅勤務も選択肢となる中、住環境における『音』の問題が注目されています。例えば『楽器演奏相談可能物件』であっても在宅勤務を行う住人にとっては、隣室からの音が気になります。演奏者もこれまで以上に配慮が必要となるケースが見られます。当社ではそのようなストレスを解消した、かつ演奏者も楽しめる防音室を備えた新築賃貸レジデンスを始めました」と語った。
「VORT 沼袋 residence」では、遮音性能最大マイナス75dBの高性能防音室を全戸の一室に採用。グランドピアノの演奏やギター(アンプ使用)、ボーカル録音などに適した環境となった。また昨今はDTM(Desk Top Music)を活用した音楽制作や動画配信などのクリエイティブな活動が広がっている。彼らが集中して作業に取り組めるプライベート空間を提供できる。
ちなみに防音室の設計・施工は防音ファクトリー(東京都目黒区)が担当。室内で80~90dBの音量を発生しても壁を閉めると、30dB程度のとても微細に聞こえるほどの音量となる。
現在同社では単身用の賃貸マンションも開発中。今回の新築物件「VORT 沼袋 residence」も含め、満室稼働後は収益不動産として1棟販売を行う。販売価格は約7・5億円の想定だ。
全48戸が防音室付き 防音性能「D-70」
今年2月、W不動産(東京都港区)の第1号となる賃貸レジデンス「Wレジデンス多摩川」が完成を迎えた。
「Wレジデンス多摩川」は京王線「中河原」駅から徒歩10分、東京都府中市住吉町2丁目に立地。南方に多摩川を望み、爽やかな緑風を感じることができる場所に佇む。規模はRC造の地上7階建て。総戸数は48戸。間取りは1LDK/2K/2LDK/3LDKの4つ。広さは33・82~78・38㎡と、入居者の生活スタイルに合わせて選べる。共用設備にEV充電設備、トランクルーム、24時間ゴミ出し可能なダストボックス、電動自転車用駐輪ラックなども設えた。
最大の特徴は「D―70」の防音室付き賃貸レジデンスであること。現代人の趣味の多様化、テレワーク導入による在宅時間の増加等により、共同住宅での「音」に関する様々な要望が増えている。同レジデンスでは楽器演奏やホームシアターを楽しむ、隣戸に気兼ねなく在宅ワークができる「D―70」の防音室を採用した。「D―70」とは発生音を100dB(電車が通る時のガード下レベル)とした場合、隣戸では30dB(深夜の郊外や小さなささやき声レベル)まで抑えた防音性能のこと。入居者募集に先立ち、音響コンサルタントの永田音響設計(東京都文京区)による音量測定で実施済み。内覧時に楽器を持参した人が、実際に楽器を奏でた上で入居申し込みを行うケースもあった。
またスライディングウォールによる生活空間と接客空間を分離できる自由なレイアウト設計、WIC(ウォークインクローゼット)・SIC(シューズインクローゼット)などの大容量収納など、入居者の快適性を重視して構築した。入居者の募集も開始している。
今後も積極的に取得 マンションの開発用地
W不動産の主力事業はビル賃貸事業。JR「品川」駅港南口から徒歩5分に位置する「Wビル」をはじめ、一都三県に複数棟所有している。今後も引き続き収益不動産の取得を積極的に行なうなど、ビル賃貸事業の強化に取り組んでいく。また2019年からシェアオフィス事業のリブポートを展開。浜松町・品川・新横浜・松戸・大宮と着実にニーズを捉えながら拡大を図り、ビル賃貸事業に続く柱として成長を続けてきた。今回完成を迎えた賃貸レジデンスはこれらに続く第三の柱と位置付けており、「Wレジデンス多摩川」を第1号案件として、今後も積極的に賃貸レジデンス用地の取得・開発に注力していく。