不動産トピックス
今週の一冊
2018.08.27 23:01
所有者不明問題に解決策は 出口はどこにあるのか
捨てられる土地と家
著者:米山秀隆
発行日:2018年7月31日
発行所:ウェッジ
価格:1000円(税別)
不動産が「負動産」と揶揄され、保有すること自体が避けられるようになるとは、土地神話で育った世代には信じがたい現実である。だが事実、日本の不動産を買い占める外国人投資家があふれる一方で、相続が発生した土地や家が所有者から見捨てられているのが今の日本だ。
2013年の総務省調査によれば、全国の空き家数は820万戸、空き家率は13.5%であったが5年後の今は更に増加しているだろう。
空き家だけではない。九州地方の面積を超える土地が所有者不明で打ち捨てられている。
本書はその実態をデータで示し、現状の対策を「結局は問題の先送りか」、「問題は認識されているが政策的な対応はまだ手付かずと言ってよい」など、もどかしさを含ませつつ紹介している。
そして核心は第3章から始まる「より根本的な対策」だ。「まちづくりとの連動」、「コンパクトシティ政策」や「エリアマネジメント」の事例をあげつつ論じ、第4章「所有権の放棄ルール」では実行可能な法整備を提案している。
だがこの机上の政策が完璧に実行される日が来るだろうか。あまりに長い間先送りし手つかずであった問題だが、地道に確実に進んでいくしかあるまい。でなければ捨てられるのは我々の方だ。