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JLL森井鑑定新社長就任会見開催 事業多様化でビッグ3を追撃
2019.02.04 14:53
不動産鑑定業界のビッグ3に食い込んでいくことができるだろうか。新社長が就任したJLL森井鑑定は今後の事業として従来の鑑定業務を核に据えながら、オルタナティブアセットの鑑定やインバウンド・アウトバウンドの業務にも対応する。伝統と外資のシナジーを狙うようだ。
JLL森井鑑定(東京都中央区)は先月16日付で代表取締役社長に永野誠氏(前執行役員COO)に就任した。また執行役員副社長に武部康博氏(前執行役員CVO)が就き、森井正太郎氏は名誉会長となった。
同社は2016年3月にJLLグループに参画。2017年8月に外資系鑑定のチームが移籍し、外国人投資家向けの鑑定事業を開始。その後昨年7月にはリサーチ担当者を設置しオルタナティブ資産の本格レビュー、12月に日本初となるファンド分析レポートサービスをスタート。今年5月にはJLL鑑定チームが合流する予定で、インバウンドとともにアウトバウンドの強化も目指す。
永野新社長はこれらの施策について「『総合バリュエーション・カンパニー』を目指す一環です」とする。この背景にはいくつかの課題があるようだ。
売上高はこれまで右肩上がりで成長。加えて不動産鑑定士、修習生の所属人数も伸ばす。一方で不動産鑑定士のバックグラウンドは多様で「鑑定業から多様なアプローチが可能になる」と話す。一方クライアントからのニーズも多様化、高度化、国際化が進む。ここに応えていく意味合いも強い。
この双方を織り込んだのが「総合バリュエーション・カンパニー」という方針だった。では具体的な展開はどうか。
展開は大きく分けて4つ。国内、インバウンド・アウトバウンドの全てに対応し事業用不動産・オルタナ資産にも対応する「不動産鑑定」、ファンド分析・事業評価、企業評価、動産評価などの「不動産以外の評価」、JLLのグループ力を生かした「CREコンサル」、またマーケット/リサーチレポートや内外投資家向けの情報発信だ。
「森井鑑定時代から築いてきた信頼と実績に加え、JLLのグループ力を生かして国内外のニーズに対応していきます。加えて『オルタナ資産』の鑑定も強化していく方向です」
また国内機関投資家向けのサービスも強化する。昨年12月に同社はオルタナティブ投資商品に関する投資家向けの分析・評価レポートサービスを発表。運用難のなかで株式や債権などの伝統的資産以外のオルタナ資産への注目が集まっている。一方でこのような適切な評価・管理するのは容易でなく、リソース確保や体制整備が課題となっていた。
このサービスでは「ローンやハイイールド社債等のクレジット関連商品」、「プライベート・エクイティ、インフラや不動産など実物資産に投資するファンド等」、「ローン担保証券や資産担保証券などの証券化商品等」の分析・評価を行っていく。
これらの展開を通して永野氏は「鑑定業界のビッグ3に食い込んでいきたい」と意欲を示す。
1948年創業の老舗としての信頼と実績、世界展開するJLLのネットワークと知見。これらのシナジーを更なる飛躍につなげていけるか。新社長の力量が試される。