週刊ビル経営・今週の注目記事

毎週月曜日更新

興和サイン 看板で地域のランドマークに

2017.01.23 12:34

訪日観光客が記念撮影、SNSで世界発信
 平成26年10月、新宿歌舞伎町に突如出現した「I(ハート)KABUKI―CHO(アイ・ラブ・歌舞伎町)」の巨大看板。連日、外国人観光客が殺到し撮影スポットとして定着。SNSに掲載され、全世界に情報発信されている。巨大看板を通じてビルの存在がクローズアップされ、ブランディングに成功した好事例といえるだろう。巨大看板を企画した興和サイン(東京都中野区)の代表取締役社長、高橋芳文氏に屋外看板の将来性について聞いた。

 「東洋一の歓楽街」と称された新宿歌舞伎町。東京屈指のネオン街として誰もが知る存在だが、平成27年4月に「新宿東宝ビル」が開業。ビル上層部に設置された「ゴジラヘッド」が話題になり、ファミリー層の集客に貢献している。一方「ゴジラヘッド」と双璧をなすランドマークが同時期に誕生したことをご存じだろうか。「ハヤシビル」のファサード全面で煌々と浮かび上がる「I〓KABUKI―CHO」の巨大看板だ。看板をバックにスマートフォンで記念撮影する外国人観光客が引きも切らない。撮影画像はSNSに投稿され、ビル・看板の存在は世界へ発信されている。
 この看板を企画したのがユニークな看板づくりに定評がある興和サインの高橋芳文氏だ。ビルオーナーから「新宿東宝ビル」開業前にビル外観のデザインを一新したいとの依頼が高橋氏のもとへ寄せられたという。元々の見た目はどこにでもありそうなソシアルビル。各階に入居テナントの看板が設置され、統一感がなかったが、外装工事を行うにあたり、エントランス付近にテナント看板を集め、ファサードには「I〓KABUKI―CHO」とLEDを用いた照明看板を設置。文字のサイズは人よりも大きく、光源を赤にしたのは歌舞伎町ならではの「猥雑さ」を表現した。
 高橋氏は「歌舞伎町はネオンの光が街の外に漏れないように建物が配置されている珍しい街。交差点はほとんど存在せずT字路が大半だ。しかし、同ビルは交差点の角地にあり、遠くから見ても看板が視認できるようになっているため、歌舞伎町を象徴するような看板づくりを企画した」と説明する。米ニューヨーク州が実施した観光キャンペーンのキャッチコピー「I〓NY」をオマージュし、商標権等をクリアした形で設置するに至った。ビルの管理担当者へ複数のデザインを提案し、オーナーがたいそう気に入ったという。デザインは興和サインが手掛けた。
 高橋氏は、平成19年に靴メーカーのニチマン(広島県府中市)の工場に自社ブランドのスニーカーを再現した巨大看板を企画・施工する等、看板による建築物のブランド化を提言してきた第一人者でもある。今回手掛けた「I〓KABUKI―CHO」もその一環だが、最大の狙いは「SNSとの連携」だ。
 「以前は看板を出せば集客効果が期待できたが、平成19年頃からSNSが普及し、看板の役割が大きく変化すると感じた。デジタルサイネージによる看板が普及し始めているが『情報の売り込み』に過ぎず、技術は進化していても誰も注目しない。その反面、街の記号としてユニークな看板があれば誰もが注目する。看板のアナログ化を追求することで『誰かとシェアしたい』と思われる情報を発信することが今の時代にマッチしているのではないか」(高橋氏)
 エリアを代表するランドマークといえば最新鋭の大規模ビルを想像するが、既存中小ビルがそうした存在になりえることも十分に可能であることを示してくれた。世界的なミュージシャンが来日した折、「I〓KABUKI―CHO」の看板をバックにメディアの撮影が行われる等、ビルの知名度は世界クラスへ飛躍しているのだ。




週刊不動産経営編集部  YouTube