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ダイヤモンドメディア 募集から成約までの経過をデータ蓄積し活用

2017.01.02 14:20

リーシング戦略にIT化の波が到来
 不動産管理・仲介会社のホームページ制作やマーケティング支援事業を展開するダイヤモンドメディア(東京都港区)は11月にリーシングマネジメントシステム「Centrl LMS(セントラル・エルエムエス)」の提供を開始した。これまで担当者個人の経験に頼り切っていたリーシング業務の効率化を目指す。代表取締役の武井浩三氏は「管理会社向けのサービスだが、不動産オーナーのメリットを最大化するのが狙い」と意気軒高だ。
 管理会社の業務の中心は物件管理とリーシング業務だが、管理の内容に大きな差はなく、コモディティ化しているのが現状。一方でリーシング業務では「稼働率」が指標になり、その実力の差は明確になるが、効率的なリーシング戦略を実践できているのだろうか。武井氏によると「例えば、管理会社は空室が出ると募集資料を客付け仲介に一方的にFAX送信するか、飛び込み営業するだけ。しかし、仲介会社は多忙でFAXなんか見ていない。最終的に空室が長期化するとコスト負担を強いられるのは不動産オーナーになってしまう」という。こうした背景から、不動産オーナーの利益を最大化するために着目したのが「管理会社のリーシング戦略をいかにサポートするか」であった。
 「Centrl LMS」の最大の特長は、募集開始から成約に至るまでの途中経過を細分化してデータを蓄積すること。例えば、募集条件を設定する際、競合物件やマーケットを加味して戦略を練るのが定石だが、従前まではマクロ統計分析によるマーケット情報しかなく、居住エリアを決めて複数の物件を内覧するのが一般的で、よりミクロデータが必要とされていた。そこで「Centrl LMS」は競合物件の募集価格をデータ化し、価格動向まで捕捉し、競合物件がどういった戦略で客付け募集をしているかを「見える化」した上で価格戦略の判断ができるようにした。武井氏は「競合物件の空室期間も把握しており、例えば、募集賃料が高く空室期間が長期化している物件があるとすれば『オーナーは焦っていない』と判断でき、ベンチマークする必要がない。半面、募集賃料を著しく下げた競合物件があっても1件だけなら、次の優良な入居者を誘致するために賃料をわざと高めに設定する等の戦略的な価格決定ができるようになる」と説明する。
 間取りや駅からの距離、築年、賃料から自動的に競合物件を抽出したデータをユーザーが分析していく。新築物件が募集を開始したり、他の物件が賃料を下げたといった価格変動があればメールで知らせてくれる。加えて、当該物件情報を取り扱っている客付け仲介会社まで抽出してくれる。自社ポータルサイト等での募集実績まで把握でき、各仲介会社が得意とする物件が自動的にわかる。どの仲介が、どの物件に対して内見案内・申し込みしたのか、担当者のキャンセル率まで全てデータ化できる。営業契約に至るまでの途中経過も評価できるので仲介会社の実力が一目でわかるようになる。
 システム導入は契約からわずか3日程度で完了するとのこと。すでに大手管理会社が導入を決めており「導入いただいた管理会社からは『管理会社の変更を検討しているオーナーからの反応は非常に良い』と差別化にもつながっている」(武井氏)という。
 しかしながら同システムが活躍できるのは現状賃貸マンションが中心。「ビル業界への進出」を武井氏に問うたところ「テナントビルは成約賃料のみならず募集賃料さえ公になっていない。情報公開が進んでいないので当システムが活躍できる場面は限られている」との認識を示した。ビル業界におけるリーシング戦略にIT化の波が訪れるのはいつになる?




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