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アストラスト 「わが家」のような会社目指す 投資家からの反応も良好
2019.02.18 18:24
成長は逆転の発想から 業界のイメージ覆す
区分マンションなど投資物件の販売を行うアストラスト(東京都豊島区)では2016年に移転した際にオフィスを改装した。床は畳となっていて、エントランスは和室。またバーラウンジやジムスペース、会議室への入口を回転扉にするなどのユニークな工夫がされている。
なぜこのようなオフィスに仕上げたのか。代表取締役の井津洋平氏は「戻りたくなるオフィスにしたかった」と話す。「戻りたくなるオフィス」とはオフィスが「実家のような安心感、居心地のよい場所」になること。そこで取り組みを始めたのは内装デザインでの工夫だった。
会社員として過ごすと、圧倒的に1日に占める仕事の時間が長くなる。また投資用物件販売という仕事柄、ハードな外回りがつきものになり離職率も高い傾向にある。
このような業界の「常識」に対して、井津社長の取り組みの成果はどうか。一定の成果を見せているようだ。
2011年に創業した同社は3年前より新卒採用を開始。離職率の正式な調査はないものの「2018年4月採用の新卒社員は半数残っている」という。他との比較はできないが、業界に20年身を置く井津氏は「多いほうではないか」と話す。
このような取り組みは内装だけでなく、採用や人事などでも力を入れる。新卒採用において重視しているのは「人柄の良さ」だ。良くも悪くも不動産営業マンの特長は「生き馬の目を抜く」鋭さ。しかし同社ではそのようなイメージを覆す人材を採用し、育成に力を入れている。その意図は何か。
「『人柄が良い』ということはクライアントの話をよく聞き理解し、求められているニーズをくみ取ること。そうすれば物件の購入を半ば無理強いするようなことも無くなります。クライアントとも良い信頼関係を築くことができます。この好循環が当社の業績にもプラスに影響しています」
そのため面接では人柄を見抜くことに重点を置いている。たまにバーラウンジでお酒を飲み交わしながら面接を行うこともあるという。
口コミが主体に 主軸は20代
業績上昇に大きく寄与しているのは当然ながら人材。オフィスはそれを演出するための舞台となっている。
井津社長によると、同社のクライアントでは20代が中心になっているという。「私が業界に入った20年前は40代以降が中心、隔世の感がある」という。若年層は「貯蓄から投資へ」の感覚が身についている。そしてインターネットネイティブ世代でもあるため、わからないことがあればすぐに調べる。このような環境が「長期の資産運用に適している」不動産投資に注目させている。
先のオフィスでの工夫はワーカーだけでなく、投資家にも一定の影響をもたらしている。
「何か効果が数字としてわかるわけではありません。しかしながら投資用不動産販売会社にありがちな『敷居の高さ』を低くし、投資家を志す人たちが来やすい雰囲気をつくりだしているのではないでしょうか」
新規顧客の紹介率も高い。2019年1月では20件の成約のなかで17件は紹介によるものだった。もちろん「人柄の良さ」と舞台はかみ合ってシナジーを起こしていそうだ。
厳しい市況もニーズ高 実需向けとのクロスも
不動産投資の環境は必ずしも良くない。金融庁から金融機関に対して不動産ローンの貸付金に対して注意が出たのは2017年12月。その後2018年1月には「かぼちゃの馬車」問題が発覚。貸付を行っていたスルガ銀行側の問題も噴出。業界全体的には逆風が吹いた。
井津氏は「投資用区分マンションのニーズは高く、オリンピック以降もこの流れは続くのではないか」と見る。金融機関の融資に関しても「不動産投資に理解のある金融機関は引き続き出している」ので、表立った影響は少ない。一方、価格が高騰気味であることが足もとの懸念材料になっているようだ。
個性的なオフィスがバックについた人材を中心に業績を伸ばす同社だが、新規事業にも取り組む。現在構想しているのが戸建分譲だ。実需向けの仲介事業も展開していて2011年に宮前平支店、2014年に溝の口支店を開設した。「戸建分譲を始めることで実需向けのクライアントが将来の資産運用で投資物件を紹介したり、既存の投資家の実需向け物件の紹介などクロスさせていきたい」としている。
これまで育成してきた地盤が今後更なる業績の底上げ、新規事業の躍進にどれくらい寄与していくか。その成り行きに注目していきたい。