不動産トピックス
第2回ビル経営アワードノミネート物件紹介
2016.10.03 12:24
ノミネートNo.25
フージャースアセットマネジメント
Good Morning Building
所在地 東京都渋谷区渋谷2-2-6
規模 地上6階
延床面積 632㎡
竣工 昭和47年6月
保有者 フージャースコーポレーション
事業管理 フージャースアセットマネジメント
事業企画 ツクルバ01
「ニーズがあるが供給が少ない」という受給ギャップを解消するべく、マンション開発を主事業とするフージャースコーポレーション(東京都千代田区)がリノベーション事業へ進出する。新会社としてフージャースアセットマネジメントを設立。東京・渋谷で中小ビル1棟丸ごとシェアオフィスに改修するプロジェクトをスタートさせた。
老朽化物件の再生実績は、収益物件化プロジェクトとして昨年11月に仙台市で手掛けたコンバージョン案件がある。築27年のオフィス・住宅の複合ビルを店舗・カプセルホテル・住宅へ再生させた。フージャースアセットマネジメントの投資事業部開発課課長の菅原文子氏は「不動産を使う人々のニーズの変化に敏感になり、多岐にわたるニーズに応える商品開発が必要になると感じた」と指摘。リノベーション事業を「事業範囲の拡大、受給ギャップの解消、既存ストックの有効活用という3つのポイントを満たす『集大成』」(菅原氏)とする。
「創業期のスタートアップの朝を応援する」をコンセプトに名称は「Good Morning Building(グッド・モーニング・ビルディング)」として11月に竣工予定。事業企画にはシェアオフィスの運営実績が豊富なツクルバ(東京都渋谷区)が参画。「横のつながり」が強いスタートアップ企業の関係性を深化させる場所としてビルの運営を進めていく。入居者同士のコミュニティ形成を促進させる仕掛けを施し、1階には「Blue Bottle Coffee」を日本に誘致した石渡康嗣氏が代表を務めるWAT(東京都目黒区)がプロデュースするコーヒースタンドの入居が決定。地上2階~5階は1区画約26㎡に小割したオフィスフロアとなる。菅原氏によると「現在プレリーシング段階だが、すでに複数の企業から入居希望を受領している」という。5階には起業家向けニュースサイト運営会社の新拠点が入居するという。
○改修ポイント
築44年に既存中小ビルを1棟丸ごとシェアオフィスへ改修。
「取得した渋谷のビルは築44年で大規模修繕が必要な状況で、稼働率は5割程度と収益性が著しく低下していました。シェアオフィスへリノベーション工事を行うに際して、既存テナントにもバリューアップの理解を得て、共用部と空室から改修を進めています。1区画約26㎡とニーズに合ったサイズであることと、『渋谷』駅から徒歩10分、『表参道』駅から徒歩8分という立地が高く評価され、プレリーシングでの反応も上々です」(菅原氏)
ノミネートNo.26
松岡地所
松岡田村町ビル
所在地 東京都港区5-22-10
規模 地上8階地下2階
専有面積 445.05㎡
竣工 昭和49年2月
保有者 松岡地所
松岡地所(東京都新宿区)は創業84年を誇るビル賃貸の老舗。今年6月、保有する1棟「松岡田村町ビル」のリノベーションを実施した。昭和49年に竣工した同ビルの6階~8階ならびに1階エントランス、エレベーター等をリニューアルした。
最大の特長は8階の専有部だ。シンプルな外観の正統派オフィスビルに、天井高5・2mという開放的な執務空間が誕生。かつては松岡地所創業者のコレクションを展示する美術館として運営されていた。当時のはめ込み型照明からLEDの吊り下げ型デザイン照明に変更。天井嵌め込み式の空調は室内全体に行き渡るように小型サーキュレーターを複数設置。OAフロアは標準仕様だが、タイルカーペットを撤去した野性味あふれる空間に生まれ変わった。
営業部主任の佐藤穂高氏は「美術館の歴史を最大限生かしながらビルの価値向上を図った」と強調した。基本設備は最新鋭のものを導入したが、内装の造作はテナントの「こだわり」が反映できるように自由度の高い仕様としている。
一方、エントランスホールは不揃いだったダウンライトを均一にした。既存の床材である大理石を研磨し直したことで照明の反射度が高まり、エントランス全体のイメージが一新。またエレベーターのかご内には、銅板に模様を浮き上がらせる特殊技法を駆使した特注プレートを導入している。デザイン性のみならず、結果として耐火性能が向上し傷や汚れも目立ちにくくなっている。
リノベーションを企画・設計したのはブルースタジオ(東京都中野区)。設備更新による従来型のバリューアップでは機能維持に留まるが、今回は「『地域に求められるビルの形』を突き詰めたリノベーションに努めビルのブランディング化に挑戦した」としている。また1階の入口付近に植栽を施したが、50種類以上の植物を配し「里山」を表現。植栽の変化によって季節の移り変わりを楽しめる仕掛けを施した。
○改修ポイント
「美術館」の歴史・文化を継承しながら、開放的かつ機能的なオフィス空間を生み出した。