週刊ビル経営・今週の注目記事

毎週月曜日更新

<企業研究>新サービス好調のMACオフィス 「働き方改革」は更なる伸びしろに

2019.05.13 17:52

 オフィスコンサルティングなどを展開するMACオフィス(東京都千代田区)。もともと文具店から始まり、1996年に現社長の池野衛氏が事業を継承し現在の形を作り上げていく。足もとは「働き方改革」の波に乗り、独自の新サービスも打ち出す。新しいオフィス移転コンサルサービスの形とはどういうものか。

 MACオフィスの足もとの売上高は約20億円。2019年度は横ばいを見込むが、来期から2期連続で25%増を狙う。
 この原動力のひとつとなっているのは「働き方改革」。池野氏は「オフィス内装デザインの市場規模は1兆円ほど」と話す。まだまだ成長の伸びしろがある業界だ。
 ただ同社の経歴をひもとくと、はじまりは大阪の文具店。池野氏の両親が鉛筆1本から売っていたという。その個人経営の店が今のような転身を遂げたのはどういう経緯だったのだろうか。
 「私が文具店に入社したのは1996年でした。もともと商社に勤めていましたが、家業が赤字となっていて再建をミッションに経営を任されました」
 池野氏は学校などに対し直接営業して一時は回復の途上に乗る。同時に文具の一本足打法では厳しいことも実感した。「アスクルのサービスが普及してからは文具だけを売っていくのではどうしても太刀打ちできなくなると考えました。そこで商材を広げ独自にOA機器などの販売も始めました」と語る。  そこで新たな需要が生まれた。
 「ある病院に卸した際に担当者とコミュニケーションをとるなかで、内装変更も考えているという話があがりました。この時、私にそのデザインを任されたのが今の事業を始めたきっかけになっています。もちろん図面を書くのははじめてでしたが、なんとか仕上げて満足していただきました。これがオフィスコンサルティングの初めての仕事になりました」
 このときのクライアントからの感謝が池野氏をオフィスコンサルティングへと動かすことになった。  事業環境は良好だ。右肩上がりの成長を遂げている。一方で池野氏は「他社と差別化を図っていくことに苦慮した」と話す。
 「オフィスコンサルティングで差別化できることは多くありません。そのため価格競争に陥りやすい面もあります」
 そこで同社が2017年よりはじめたのが「オフィス移転と残留の比較検証サービス」だ。企業側は人員増強や「働き方改革」に対応していくためにオフィス移転ニーズを抱えていることが増えている。一方、オフィス市況は需給が逼迫した状態で移転先のビルを探すのは難しく、また賃料も高騰している。また移転する企業にとって内装設計費用はもちろんのこと、社員数に対する適正面積がどれくらいかを把握していることも少ない。
 「『オフィス移転と残留の比較検証サービス』では移転を検討している企業と1年半ほど前からワークスタイル検証や適正面積の検証、事業効率、シミュレーション図の作成を行うなどしていきます。その後に移転と残留のメリット比較やイニシャルコストの具体化、工事期間の適正化、工事区分の確認、また物件選びの相談まで行っていきます。これらのサービスを無料で提供していて、クライアント企業様はここから最終的に移転か残留かを判断することができます」(池野氏)
 もし「残留」を選択すれば同社にとって利益にはならない。それでも「『働き方改革』が進むなかで企業側にとって対応は不可避となっています。その後の関係性を築いていくことができるのは当社にとってメリットが大きい」と話す。
 「働き方改革」の波のトップリーダーを狙うMACオフィス。1月31日に「山王パークタワー」に入居する自社オフィスのリニューアルも実施した。
 テーマは「自ら実体験し、納得し、お客様に伝えるオフィス」。フリーアドレスを導入し、オフィス家具も一新した。自社での「働き方改革」の意味合いもあるが、「モデルルーム」としても機能させたい考えだ。
 池野氏は「お客様が打ち合わせでいらっしゃった際に、当社のオフィスを見てもらうことでイメージをつかんでもらうことができるのではないでしょうか。また、スタッフの提案力の強化にもつながると考えています」と話す。
 「比較検証サービス」はこれまで22社が利用。年間で10社が利用するペースで推移する。  今回のオフィスリニューアルによるブランディングによってこの数をさらに伸ばしていくことになりそうだ。池野氏は「自社での実践を通して、クライアントへのアプローチを強めていきたい」と意欲を見せた。




週刊不動産経営編集部  YouTube