不動産トピックス

クローズアップ 宿泊施設編

2019.07.22 11:18

 年を追う毎に訪日観光客の増加が続いている日本であるが、昨今の日韓関係の悪化によって韓国からの訪日観光客の減少が危惧されている。しかし、いまだ宿泊施設の開発工事は首都圏や一部の地方都市で継続中。地方都市によっては観光客から得られる収益によって、街の再興や活性化に期待を寄せる声もある。まだまだ強いニーズのある宿泊施設に焦点を当てた。

築50年のホテルを大規模リニューアル
観光利用や女性客の確保も視野に入れて仕上げる
 ビルやホテルのリモデル(再構築)を得意としているノットコーポレーション(大阪市中央区)は、SKハウジング(大阪市北区)が所有する「大阪リバーサイドホテル」の全館リニューアル工事を行った。
 「大阪リバーサイドホテル」はJR「桜ノ宮」駅から徒歩3分、その名の通り、大川のほとりに立地し、春には満開の桜が咲き誇る大阪でも有数の桜の名所に位置する地上10階建てのホテルだ。都心からも近く、観光・ビジネスの双方に利便性のよい同エリアは近年新たなホテルの開発が進む。その中にあって築50年となる同ホテルは、伸び悩む稼働率と宿泊者の満足度の向上に繋げるべく大規模なリニューアル工事に踏み切った。
 今回のリニューアルではビジネス利用者だけでなく、観光利用や女性客の確保も視野に入れ、マーケットにおけるポジショニングをシティホテルとビジネスホテルの間に設定した。元は貸し会議室であった9階に17の客室を新たに追加し、全125室へ客室を増床。利便性の高い立地と穏やかな川沿いという高いポテンシャルを併せ持つ同ホテルの希少性を最大限に生かし表現すべく、建物内外に川の流れを想起させるテクスチャーを取り入れ、穏やかな癒しを体感できる空間を演出した。
 また、フロントは既存の位置をセットバックすることでゆとりある空間を設計し、床の大理石は既存を利用するなど、新旧の意匠が協調しあう空間を創りあげた。2階のレストラン「Long Table」のリニューアルデザインも必見だ。
 リニューアル後は近隣に新築ホテルが建ち並ぶ中、客室稼働率の大幅な向上を実現。今回プロジェクトを担当したR事業部マネージャーの伊藤奈緒美氏は「弊社は店舗の設計・施工からスタートしました。そこで培った集客に繋げる仕組みづくりのノウハウを生かし、ターゲットの設定から集客獲得までのストーリーをプランニングし具現化する事を得意としています」と語る。「新築には勝ることのできないスペックをカバーするには築古ホテル・ビルだからこそ引き出すことのできるオンリーワンな空間を創ることが最も大切。これからもあらゆるホテルやビルの資産価値向上につながるご提案ができれば本望です」とのことだ。

宿泊兼セミナーでの利用増加 レンタルスペースも兼ねた民泊

 「第64回 ビル経営サミットin関西」のビルオーナーパネルディスカッションに登壇した上野徳之氏は、保有する住居・店舗複合の「西長堀ビル」と「グランドメゾン心斎橋」で、レンタルスペースや民泊を行っている。
 当初は手探り状態で宿泊使用への部屋の改修や家具・寝具の用意、ネット環境の整備などに取り組み、少しずつ利用者のニーズに応えることで稼働率の向上に繋げてきた。昨今は以前から付き合いのある特定のユーザーのみに貸し出すことで、未然にトラブルの発生を防ぐことも行っている。必ず利用(宿泊)する際は対面式で施設の使用方法やルールを教えることも徹底する。このきめ細やかなサービスで、利用者からの反響は上々とのことだ。
 ここ数年で増加傾向にある要望に、宿泊兼セミナーでの利用が挙げられる。特に首都圏から講習やセミナーでの利用も兼ねて泊まりに来るワーカーが増えており、部屋をレンタルスペースも意識してリフォームした結果、リピーターも増えてきた。上野氏は「ビジネスノウハウをレクチャーするセミナーや講習、ネイルアート、資格関係の講習会など活用方法は多彩です。ついでに宿泊もできる、宿泊費も割安で済むなどのメリットもあるため人気です」と語る。




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