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Mellow 公開空地を条例で活用へ
2018.09.25 15:26
設計段階からの参画も視野に
大規模ビルなどで設置される公開空地。容積率ボーナスや高さ制限の緩和などがあるため、活用も多い一方、公開空地自体の活用は少ない。先般、その公開空地の活用に向けてある事業者が動きだした。
条例利用、15年で60件ノウハウ生かし活用促す
大規模ビルなどの敷地内に設定されている公開空地。いままで活用される機会が少なかったこの空間。その活用に向け、ある企業が動きを見せている。
フードトラック・プラットフォーム「TLUNCH」を展開するMellow(東京都渋谷区)は今月3日、新しい取り組みとして公開空地活用サービス「しゃれ街」をリリース。第一弾として「日本IBM本社ビル(三井倉庫箱崎ビル)」での導入を発表した。
このサービスは東京都の条例「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」を活用したもの。2003年に施行後、15年間での認定件数は60件。年間4件程度と、これまであまり活用されてこなかった条例だ。
代表取締役の柏谷泰行氏は公開空地の現状について「多くの敷地を割いているにも関わらず、緑化やベンチの設置にとどまっている」と指摘する。建築主にとって容積率ボーナスや高さ制限の緩和といったボーナスがある一方、せっかく設けた空地を積極的な活用や賑わいの創出につながっていないようだ。
Mellowは今回のサービススタートに先立ち、まちづくり団体としての登録も行った。
「しゃれ街」では条例の取得に必要な調査や申請、運営業務の代行などを行っていく。活用方法のメーンとなるのは「TLUNCH」、フードトラックなどの展開だ。
柏谷氏によると、これまでの「TLUNCH」展開においても「この制度を利用したものが10件ほどあります」と明かす。従前より条例を活用した公開空地活用を提案していたが、そもそも条例の活用件数が少ないために、各社で経験のある人材が不足。そのため同社ではひとつひとつの案件で東京都との交渉を行い、申請ノウハウや条例への知見を蓄積してきた。
「たとえば条例を活用するにあたってベストなのはひとつの物件で1ha以上の空地があることですが、たとえば同一のデベロッパーあるいはエリアマネジメント団体が携わる街区であれば、合算することも可能です。このような知見や申請のためのノウハウがないと大きな手間になっているというのも事実です」
今回、申請業務もMellowで代行する。公開空地の活用を考えているデベロッパーが利用しやすいサービス設計を目指す。
未活用公開空地は街活性化への資源
東京都都市整備局が公開している「東京都総合設計制度許可実績一覧表」には744件のプロジェクトが掲載されている。これらは公開空地の設定を受けているものだ。
「これらの空地は東京活性化への資源だと考えています。一方で大規模再開発も進んでいます。当社として既存の公開空地を活用していくことはもちろんのこと、これから開発される物件の公開空地が活用しやすくできるようアプローチしていきます」(柏谷氏)
同社では今後、再開発計画などについて設計段階から企画提出を行っていくことも念頭にいれる。「導線や段差次第では活用しにくい公開空地もあります。せっかくの資源を生かせるよう、積極的に発信していきたい」とのこと。
柏谷氏は「2020オリンピック・パラリンピックまでに東京のすべての公開空地で個性豊かな賑わい作りを展開し、街を歩いているだけで日本の魅力に出会える状態をつくりたい」と意気込む。今後のサービス利用の伸長に期待したい。