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警視庁OBによる有人警備会社 内部犯行の監視や発見も

1999.05.21 11:36

 通常の警備より一歩踏み込んで、危機管理コンサルティングまで行う警備会社エス・ピー・ネットワークが注目を集めている。警察OBを多く抱えるこの会社は暴力団をも相手に渡りあえるという。
 「通常の警備ではなく、企業の安全維持とトラブル解決を図り顧客企業の売り上げに貢献するというコンセプトに基いた危機管理コンサルティングを行っています」とエス・ピー・ネットワーク(東京都新宿区)の渡部洋介社長は語る。
 同社の社員数は180名、うち渡部社長を含む30名が警視庁OBで、しかも30~40代の働き盛り、つい先日まで現場の第一線で暴力団や凶悪犯罪者と渡りあって来たプロフェッショナルだ。
 「これまでは有人警備といっても一般企業を定年退職した高年齢の男性が警備を行っている例が殆どでした。しかしこれではいざ暴力団などが押しかけて来た場合に防ぎ切ることは困難です。ト社の場合警察OBの指導のもと徹底した危機管理教育を行った警備員が暴力団や総会屋等の排除を行います。また緊急時には警察OBである担当の危機管理責任者が5分以内に現場に駆けつける体制を整えています。しかし何より当社社員が暴力団に対してニラミがきく立場の為、暴力団自体が当社警備のビルや店舗には近づかなくなります」
 また、イメージ上ソフトな警備を行いたい企業に対しては元婦警をその企業の女子社員に扮して受付として派遣させたり、小売店舗等では接客と警備両方を併せて行う警備員をカスタマー担当として提供したりできる。
 いずれのケースでも暴力団等外的要因だけでなく、従業員の背任や横領といった内部犯行の監視、発見をも行っている。これが「企業売り上げに貢献する」所以だ。
 暴対法施行以降の”たかり”の方法は巧妙化を極めているという。それだけにその対処は素人には困難で「気が付けば暴力団の餌食になっていた」というケースは多い。こうした現状に対して企業側の対応は鈍く「米国企業に比べ危機管理に対する意識、対応は20年遅れている」と渡部社長は指摘する。
 また国内の場合、特に大銀行や証券などの企業において企業イメージを重視するあまり、暴力団や総会屋とのトラブルを表沙汰にせず内々に処理する傾向が強いのも問題だという。
 「暴力団問題解決の最大の近道は検挙です。企業側が毅然とした態度をとることが何より大切です」
 同社の元には度々警備の依頼が舞い込むが、その中には既に暴力団との持ちつ持たれつの関係が既に築かれてしまっているケースも少なくない、そんな場合には依頼をきっぱりと断ることも。
 逆に断固暴力団と対決する姿勢の企業に対しては採算度外視で依頼を受けることもあるという。
 現在の顧客はディスカウントストアのドン・キホーテやサトームセンなど1都3県を中心に約120社を数える。
 「当社はトラブルや事件を解決、処理するのが目的の事件屋ではありません。それらを未然に防ぎ社員の方に業務に専念してもらうことが重要です」
 と語る同社。料金の方も、仮にどれだけトラブルが発生しても当初に契約した料金のみで請け負うというのもそうした企業姿勢のあらわれだ。

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