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<外資系企業の日本戦略>サヴィルズ・ジャパン オフィスリーシング等に参入してサービス拡大 5年後を目処に100人体制ファイナンスアレンジも展開

2006.06.05 15:14

 世界有数の総合不動産顧問会社であるサヴィルズ(英国)の日本法人サヴィルズ・ジャパン(東京都港区)が、日本での事業を拡大する。代表取締役の福馬俊哉氏はじめ、各部門のキーマンに今後の戦略を聞いた。
 サヴィルズグループは、英国をはじめ、欧州全域、オーストラリア・シンガポールなどのアジア太平洋地域他20カ国112支店を展開し、従業員1万4500名を擁する。グループの2005年売上は、3億7170万ポンド(約780億円・210円換算)、経常利益は5860万ポンド(約123億円・前同)で、全世界4700万㎡の不動産をマネジメントしているという。
 日本においては、04年11月、日本GMACコマーシャルモーゲージのPM部門を買収したことをきっかけに事業がスタート。商業・住宅・開発物件などに関する総合不動産サービス、およびコーポレート・ファイナンスや不動産投資など不動産に関わるファイナンシャル・サービスを提供している。
 「今月からはオフィスリーシング部門を設置し、今後、住宅売買仲介の分野にも参入します。現在31人体制ですが、5年後を目処に100人体制にまで拡大していく予定です」(代表取締役福馬俊哉氏)
 現在、積極的に人材の獲得を行っており、各方面から経験を積んだ優秀な人材が集まっている。その理由を福間氏は「給与水準が高いということもあるが、社内サポートシステムの充実など仕事をし易い環境を整えているため」と分析する。なお、同社では先日英国の経済紙「エステートガゼッタ」が行った英国内の企業イメージなどに関するアンケートのサービスプロバイダー部門1位に選ばれているという。
 大手オフィス仲介から同社オフィスリーシング部門のマーケティング・リサーチャーに移籍した中畑太一氏も「提案する意見を受け入れてくれる土壌があり、やりがいを感じる」とコメントする。
 なお、オフィスリーシング部では現在中畑氏が中心となってデータベースを整備している。これは、物件管理システムと募集用のホームページがリンクしており、リーシングにおける営業ツールとして活用できるものだ。また、今年中にはオフィスリーシングの支店を大阪に開設するという。
 リーシング部門の発足は同社のPMにも好影響を与える。プロパティ・マネジメント部門ゼネラル・マネージャーの川俣雅明氏は、「PM受託物件へのリーシングや、リーシングからPM契約への発展など、シナジー効果が見込める」と期待を寄せる。アセット・マネジメント部門を担当するアソシエイト・ディレクターの石川治世氏も「不動産運用における運営・管理・客付け機能が連携することで高水準のAMサービスの提供が可能になる」と語る。なお、AM部門はドイツの年金基金や米国不動産ファンド、シンガポール政府投資公社などを主なクライアントとしており、PM部門は06年3月末時点で23万6621㎡を受託している。
 売買コンサルティングなどを手掛けるインベストメント・セールス部門は単なる売買仲介業務に止まらない。ディレクターを務めるクリスチャン・マンシーニ氏は言う。
 「我々は、単なる不動産仲介ではなく、不動産取得のアドバイザリー業務を行います。自社の不動産査定チームが物件を精査し、時には取得を見合わせた方が良いと助言するなど、顧客の利益を最優先します」
 また、物件情報の案内だけではなく、個人の不動産オーナーなどに向けて現在保有している資産の見直しや、リファイナンスに関する助言も行っているという。
 「例えば、10年前に4億8000万円でビルを取得して、現在の価値が11億円に上がっているビルであれば、ノンリコースローンのリファイナンスを行うことでIRR(内部利益率)が20%以上に上昇することもあります。そういうメリットがあることを提案し、当社がアレンジメントを引き受けています」(マンシーニ氏)
 なお当面の目標としては、「サヴィルズグループのアジア地区における売上高(現在約200億円)の約半分を担う規模を目指します」(福馬氏)としており、外資系の強みを活かしながら、日本の不動産マーケットにおいて存在感のある不動産サービス企業として事業展開していく。




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