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<ご意見拝聴>都市の価値は「効率性」から「快適性」に 「高いビル」建設の周囲への影響は容積率中心のコントロールに物申す

2006.11.20 14:18

-不動産ソリューションフェアにおいて都市開発について語っていただきますが、タイトルである「都市の価値」をどのようにお考えですか。

青山 20世紀の都市に求められたものは「効率性」でしたが、今世紀では「快適性」です。大きな変化は、都心における「本社機能」の変化です。かつての工業時代においては、企業の本社は、事務処理を行う場所でしたが、現在の情報化時代では、人間的な交流を行う場所です。従って、新丸ビルや三井タワーなどのように、本社の在するビルであっても、楽しさが求められます。日本橋や品川にも同じことが言えます。10年程前、新丸ビル建設の話が持ち上がった際、私は「税金を使って整備した地域に、純オフィス街を作ることが許されるのか」と反対したものですが、時代は変わりました。いまや、純オフィス街では、企業も人材を集めることができません。

ー近年の都市開発における容積率の緩和政策については、どのようにお考えですか。

青山 今後の都市においては、建て替えだけでなく、新しいものを作り出す必要があります。しかし、行政がそれを邪魔している場合もあります。その最たる例が「容積率中心のコントロール」です。街並みや景観を重視すべきなのです。しかし、公民双方において、こうした点については保守的なものです。とくに、民間においていまだに「容積率」=「経済力」というイメージがあるのも問題です。「容積率が高い」=「高いビルが建つ」わけではありません。例えば平成16年に竣工したコレド日本橋の場合、基準容積率が最高1000%の時代に、容積率を移転して1545%とし、132mの高さのビルを建てています。今年竣工した新丸ビルの容積率は1437%で、ビルの高さは183mです。対して、六本木ヒルズは、容積率が660%、ビルの高さは238m。東京ミッドタウンは、容積率が680%、ビルの高さは248mです。一般的に「高いビル」と言われても、容積率はそれほどでもない場合も多いのです。「高いビルが建つ」ということは、周囲にオープンスペースを提供しているわけですから、周辺の住民にとっては、本来喜ばしいことなのです。

ー今後の不動産所有者には、どのような心構えが必要だと思われますか。

青山 容積率に次いであげられる行政の問題は「土地所有権絶対保護主義」です。本来ビルオーナーが念頭に置かねばならないのは、ビル単体の取り組みだけでなく、街全体の価値を高めることが、不動産価値の向上につながるということです。商店街においても、歩道や夜間の照明などは整備されていても、休憩所やトイレはない。来訪者の長居を妨げているようなものです。今後はこうした点への取り組みが重要になってくると思われます。




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