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<新規上場企業の戦略>アーバネットコーポレーション デザイン力と芸術性で他社物件と差別化 設計出身のデベロッパー 芸術家育成にも取り組む

2007.04.02 17:34

 アーバネットコーポレーション(東京都千代田区)は3月28日、ジャスダック市場に上場した。同社は、不動産ファンドなどへのワンルームマンション1棟売りを得意としている。競合他社も多い分野だが、今後どのような戦略で差別化を図っていくのか――、服部信治社長に聞いた。
――ワンルームマンションは、一部で供給過剰だといわれるが
服部 確かに供給量だけを見れば過剰ですが、良質な物件に対する需要は減少していません。当社は設計事務所からスタートしているため「ものづくり」に対するこだわりは強く、デザイン力や芸術性で差別化を図っています。他より良いものを作れば確実にニーズはあり、安定した収益を見込める物件はファンドや個人投資家からの引き合いも強いと考えています。
――芸術性の高いマンションとは
服部 自社で設計・開発するマンションのエントランスには、彫刻作品や絵画を展示しています。例えば、江東区で手掛けた物件では、河口近くの川沿いということもあり、「海の記憶」をテーマに詩をつくり、「水〜海」をテーマとした彫刻・絵画制作を依頼しました。作品が並ぶエントランスロビー・ホールには熱帯魚の泳ぐ水槽を設置し、建物外観にも海や雨の雫をイメージしたデザインを施すなど一貫したストーリー性を持たせています。
――販売価格や賃料への影響も大きいのでは
服部 芸術作品の設置が開発コストに占める割合は微々たるものです。マンションに芸術作品を設置しようと考えたのは、共同住宅であるがゆえに個々の負担は少なくて済むという考えからです。海外では彫刻作品など芸術が日常生活のなかに溶け込んでいますが、日本では限られた一部の方だけが楽しむものというイメージがあります。しかし、100戸のマンションなら500万円の作品を設置しても1戸あたり5万円のコストアップでしかありません。数十年の賃料で割れば微々たるものです。作品を気に入って入居・購入するユーザーがいれば、それが差別化になります。
――若手芸術家の発掘にも取り組んでいるそうですが
服部 平成13年から、学生彫刻コンペ「アート・ミーツ・アーキテクチャーコンペティション」を主催し、最優秀賞の作品を買い上げて、開発物件に展示しています。過去の受賞者には当社開発計画に彫刻家として参加する作家も出てきました。
――ワンルーム開発以外への取り組みは
服部 設計事務所として様々なタイプの不動産開発を手掛けた実績があり、今後は多様化を検討していきます。また、従来他社物件の設計監理を手がけていたこともあり、今でも多くの依頼をいただくのですが対応しきれないため、設計事務所のネットワークを形成し、事業主がWEBを通じて複数の提案を受けることができるサービス「アーキポート」事業をスタートしました。既にコンペも開催して実績を重ねています。




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