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<新事業分野への挑戦>東京テアトル 不動産流動化の取得・再生・販売を内製化 本業とのシナジー見込み、サービサー事業を開始
2007.04.16 11:56
東京テアトル(東京都中央区)は、債権回収会社であるアドホック債権管理回収の発行済全株式を取得。テアトル債権回収(東京都中央区)に社名変更を行い、サービサー法に基づく事業を開始する。同社は映画興行事業など映像関連事業をはじめ、ホテル飲食事業、不動産関連事業にも取り組んでいるが、今回のサービサー事業への参入はどのような狙いがあるのだろうか。取締役企画本部長兼経営企画部長の三村博一氏に話を聞いた。
「サービサー事業参入の理由は、不動産流動化事業における物件仕入れが困難になってきたことと、ホテルや飲食などのサービス事業においても、事業拡大には企業再生を含む企業情報のネットワークが必要だと判断したことにあります」(三村氏)
同社では、8年ほど前からから子会社のアルファハウジングで不動産競売事業を手掛けており、1000件程度の物件を取得してきたが、昨年6月末に吸収合併し、不動産流動化事業部としている。物件価格の高騰によって競売での物件取得が困難になってきており、任意売却も価格が高騰しているため、不動産流動化事業を拡大していくには、不動産担保債権の買取りなど独自の情報ネットワークが必要だった。
そのため、以前からサービサー事業への参入を検討してきたが、単独でのスタートはリスクが高すぎると判断。今回、テアトル債権回収の代表に就任した前田稔社長をはじめ、経験豊富な人材を確保したこともあり、廃業する予定だったサービサーを取得した。
「サービサー事業では、債権の価値を見極めるプライシング能力が問われるため、ノウハウを有する人材の確保がなにより重要です。現在、経験者を含む8名程度のスタッフを確保し、上期中に20名程度まで増員するつもりです。基本的に無担保債権、無譲与債権を主な買取りの対象とし、良い情報を得られれば、不動産担保債権や企業再生事業に絡む債権取得を目指します」(三村氏)
無担保債権、無譲与債権以外に取得を目指すのは、不動産担保債権の他にホテルや飲食事業を展開する企業の債権など、本業の部分でノウハウを有する分野。同社は映画などのエンターテイメント性の高い分野から焼き鳥店、キャバレーなど幅広い事業展開を行なっている。また、所有・運営を行う不動産もオフィスビルから商業施設、レンタルオフィス、賃貸マンションなど多岐にわたるため、競合の少ない分野での債権取得が可能だ。
なお、同社では不動産流動化事業の拡大を図る過程で、平成15年8月にリフォーム会社のティー・エー・ユニオンを設立し、取得した物件のリニューアルを手掛けている。物件の取得および再生、販売に至る過程を内製化することでノウハウを蓄積し、シナジー効果を最大化していく考えだ。
ティー・エー・ユニオンがこれまでに再生した物件は多いが、代表的なものを見ていくと、昨年3月に江戸川区西葛西で事務所から住居にコンバージョンした「ファミール西葛西」がある。具体的には、平成2年3月竣工のRC地上7階建て、延床面積4068・33㎡の事務所・住居の複合用途ビルの事務所部分を賃貸住宅に転用した。また、工場から住居に転用した例もあるそうだ。
「当社では、昨年12月に私募ファンド組成も経験しています。また、PMやAM部門も強化しており、不動産事業に関わるサービス範囲の拡大を推進し、外部へのサービス提供も行っていきます」(三村氏)