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矢野経済研究所 ビル管理市場のリサーチ結果を公表
2012.10.22 14:10
マーケットリサーチ会社の矢野経済研究所(東京都中野区)は、ビル清掃や設備管理、警備業務等の受託サービスを対象にした「ビル管理市場」の市場規模調査を実施。今年10月18日に調査結果を発表した。調査機関は今年7月~9月。ビル管理事業者を対象に直接取材・電話アンケート、文献調査を併用した。
同調査によると、平成23年度のビル管理市場規模は、前年度比103・1%の3兆7130億円となり、2期連続でプラス成長を記録。東日本大震災の影響は軽微に留まり、今夏頃には回復のきざしが見え始めたが、リーマンショック以降の経済低迷状況が根強く、従来の主要3業務(清掃・設備管理・警備業務)において伸び悩みを見せるなど、市場環境はマイナス要因が多いが、震災復旧や省エネ・節電に係る工事需要などの拡大が見られ、市場規模を底支えした。しかし、市場環境の厳しさは依然続いており、平成21年度の大きなマイナス成長からの反動・回復といった側面が強いという。また、収益性の悪化は一層深刻な問題となり、従来からの新設需要の減少によって市場競争の激化が進行。一方でリプレイス物件が増加傾向にあり、一時的に売上高が拡大しても引継ぎ等の準備作業が多発するため、コスト負担が増加する傾向が強いという。限界といわれる低価格化競争によって有力事業者であっても一層のコスト圧縮を推進せざるを得ない状況だという。
低価格化路線が長期化するビル管理市場だが、将来の展望はどうか。同調査によると、本年度の市場規模は昨年から横ばいの3兆6925億円と予測。平成22年度後半以降、市場環境にほとんど変化がなく、当面変化を促す要因等も見当たらないことから、主要3業務については横ばいから微減傾向、工事需要を中心にその他の業務がやや増減する形で、市場規模として横ばい傾向で推移すると見ている。
そうした背景を受けて、近年、有力なビル管理事業者はリニューアル工事領域への注力を行うなど、周辺事業や異業種等への参入検討を行う動きが増加しているという。大手事業者では一般消費者向け清掃受託市場への参入、不動産業や高齢者施設サービスへの参入など、中小事業者では飲食店や不動産業などへの参入が比較的検討される領域となっており、今後もこのような検討・取り組みが進むものとしている。