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竹中工務店 耐火性能・意匠性・構造性能を確保した耐火木材用の接合方法を開発

2013.06.10 14:54

 竹中工務店(大阪市中央区)は耐火集成木材「燃エンウッド」の柱と梁の接合部に最適な耐火性能・意匠性・構造性能を確保した接合技術を開発し、横浜・港北ニュータウンにおいて建てられている国内初の耐火木造大型商業施設「サウスウッド」に適用された。
 「燃エンウッド」は積み重ねた板を接着剤で一体化した集成材で建物の荷重を支える荷重支持部と、主にモルタルで構成される燃え止まり層と燃焼した際に炭化して断燃効果を発揮する燃え代層の3層から構成される柱および梁の耐火集成木材だという。同技術は特殊な技術を必要としないので施工性に優れており、梁を取り付ける側の柱の燃え代層を削り取って固定用の穴を荷重支持部まで開け、ボルトとナットを使ってT字型の金具に固定。次に梁側の荷重支持部に柱と垂直になるように溝を開け、そこにT字型金具の長辺の部分を挿入し、梁に開いた穴とT字型金具の長辺部分に開いた穴を貫通させ固定するようにドリフトピンを通して金属部分が外から見えないように木栓を穴の両側から差し込むことで木質感のある意匠性が高い外観を実現している。
 更には、「燃エンウッド」の柱と梁の接合部分には高い性能を保持するために金具を用いているが、金属は木材に比べて熱伝導率が高いため、火災時に「燃エンウッド」自体の燃焼を助長する恐れがあったので、接合金具を梁と柱のモルタル部分である燃え止まり層の内側に埋め込むように配置することにより、熱を金具に伝えないようにしている。その他にも、これまで「燃エンウッド」を活用したプロジェクトでは全てこの接合方法を適用。都市部でも耐火木造建築の計画が可能となったことで木造建築が見直され、今後、普及していくことが考えられる。プロジェクト適用に際しては、竹中工務店の技術研究所において実物大の柱・梁の接合部を用いて建物に作用する荷重と同等な力をかけた状態で燃焼実験を実施するとともに、接合部に作用する荷重をかけた構造実験も行われたとのこと。この実験は計画から結果の評価まで第三者機関へ検証を依頼し、「燃エンウッド」と同等の1時間耐火性能を確認している。
 また、「サウスウッド」において、最大高さ12・5mの「燃エンウッド」の柱と最大長さ9mの梁がどのように適用しているのか建築作業所の見学会を実施。ブランディングを担当したCIA inc.(東京都渋谷区)、設計のE.P.A環境変換装置建築研究所(東京都目黒区)、施工の竹中工務店の関係者が出席して概要の説明が行われたほか、建築主の横浜都市みらい(横浜市都筑区)の代表取締役である姉歯道信氏が挨拶を述べた。
 「当社は企業理念に、『地球環境に優しいまちづくり』と『地域貢献』を掲げ、数々の商業施設を経営しており、この度の大規模商業施設『サウスウッド』の建設においても、次世代のモデルとして環境配慮とコミュニティの活性化をテーマに事業を進めております。『燃エンウッド』は木の温もりを感じて大空間を実現することができ、近隣コミュニティの創出に期待が可能なうえ、循環資源であることから採用しました」
 なお、地上4階地下1階建ての「サウスウッド」は平成25年9月に完成を予定。延床面積が1万874・33m、建築面積は2941・73mとなっている。




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