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NTTファシリティーズ 低コストで導入可能な建物被災判定システム「揺れモニ」を開発 地震発生時の建物の安全性を「見える化」
2013.10.21 14:20
東日本大震災発生時に問題視されたのがビルにおける長周期・長時間地震動だ。震源地から遠く離れた首都圏や大阪に位置する高層ビルが長時間にわたり大きく揺れたことで、倒壊の危険はなくても、入居テナントに恐怖感を植え付けることになった。そして、震災発生後、各テナントからビル管理者に対してビルの継続使用の可否に関する問い合わせが殺到したが、建物の被害状況を伝えるための正確なデータがなく、テナントへの説明に多大な時間とコストを要したのは記憶に新しいところだ。
「ビルの防災センターは地下階に位置することが多く、上層階の震動を実感しにくい。そのため、ビル管理側とテナント側で震動に対する恐怖感が大きくかい離することが最大の問題でした」(吉田 献一氏)
こうした背景から、NTTファシリティーズ(東京都港区)は、地震直後の建物の継続使用に関する安全性を提示できるシステム「揺れモニ」を今月1日から販売を開始。技術的に困難であった高さ40m(10階建相当)程度のビルにも導入できるようになった他、独自開発した地震対応型加速度センサーを採用することで、より低コストで導入でき、テナントへの安心・安全の提供と調査コストの削減を両立することが可能になった。
「従来型の建物被災判定システムは振動解析モデルがないと導入できないため、建物の高さが60m未満のビルには導入が困難でした。さらに、高額な地震計と振動解析モデルを採用したため、非常に高コスト。一方、『揺れモニ』は独自センサーを開発したことで、システム構築価格の低コスト化を実現しました」(後藤 和弘氏)
同システムは建物の全層にセンサーを設置し、加速度データを取得、独自のシステム解析によって、地震時における層間変形を求め、建物の継続使用が可能かどうかを瞬時に判断し、更により詳細に検討する場合に、固有周期と傾斜を用いる。利用者のPC画面に青・黄・赤の3段階で判断情報を表示。誰もが一目で建物の安全性が判断できるように「見える化」を実現した。
「また、従来品はシステムの販売のみで、その後のフォロー体制が充実していないケースが多いのですが、当システムはセンサーとデータ収録装置を24時間365日体制で監視しており、建物カルテレポートの毎月配信やシステムの点検・修理、故障時の対応等は当社が対応しているため、安心のサポート体制のもと効果的なBCP対策が可能になります」(後藤氏)