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ティーケーピー 不動産再生の鍵は「シェアリング」ティーケーピーが保養所再生事業に進出
2013.11.04 17:10
ビル業界では「貸会議室事業」で知られるティーケーピー(東京都新宿区)だが、今年10月から本格始動したのは、全国のリゾート地で遊休化した「保養施設」の再生事業だ。同社代表取締役社長を務める河野貴輝氏によると「貸会議室事業、ホテル内宴会場の再生事業に続く第3の事業として、将来的に中核事業に育てていきたい」と期待を寄せている。
創業当初から取り壊しの確定したビルで貸会議室事業を展開してきた同社だが、クライアント企業からの多様な要望を受けて、未稼働となった宴会場の再生事業に進出。平成19年には旅行業免許を取得し、研修施設や研修プログラムの紹介・企画を行ってきたが、宿泊を伴う研修の需要が拡大していることから、より利便性の高いサービスを提供するため、保養施設の再生事業を開始し、「TKPリゾート」として運営する。
「従前は大型ホテルに送客することになり、貸し切りにはなりません。レジャー色の強い環境の中で、効率的な会議や研修ができるかといえば難しい。単一企業が貸し切りできる研修用のリゾートホテルに多くの需要があるのではと考えました。そこで、遊休化した全国の保養施設が最適だったのです」(河野氏)
オープンな議論や濃密な研修を促すためにオフィスから離れた場所で会議や研修を行う「オフサイトミーティング」はアメリカではすでに定着しているが、日本での普及は限定的だ。しかし、その潜在的な需要は大きい。
「世の中の上場会社は約4000社あり、中小企業を加えると膨大な企業が存在します。しかし、保養所や研修施設を保有している企業はごくわずか。まだまだマーケットは掘り起こせるはず。さらに、今保有している保養施設を当社が借り受けることで、賃貸収入を得る事ができます」(河野氏)
これまでは会議室を備えた旅館やホテルを紹介するだけだったが、ワンストップで研修施設として賃貸が可能になる。ティーケーピーは「保養・ミーティング・旅行」を特徴としており、同社が保有するケータリングサービスを利用できる他、研修先での野球チームの対戦相手をブッキングする等、既存事業とのシナジー効果を最大限に生かすことが可能。毎月約8000社と取引を重ね、これらのクライアントを新事業の基盤顧客とする構えだ。
10月1日には源泉かけ流し温泉を備えた「TKPリゾート レクトーレ熱海小嵐」が開業。12月1日には「レクトーレ熱海桃山」、「レクトーレ箱根」、「レクトーレ軽井沢」の3施設も開業予定だ。資生堂や中部電力、三菱電機、新日鉄といった国内屈指の大企業がかつて保有しており、現在は使われていない施設を、同社が賃貸し、宿泊機能付き研修リゾートとして蘇らせる。これまで建物の所有者である単一企業のみが利用していた保養施設をより多くの企業でシェアリングできる。まさに、遊休化した不動産の再生事業だ。