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【福岡】スペースRデザイン レトロビルの名物管理人の目に見えぬ努力と気遣い
2013.11.25 12:08
福岡市博多区の地下鉄「中州川端」駅の裏手にある、築50年を超える「冷泉荘」は、東京・青山の「同潤会アパート」をモデルとして再生したレトロビル。レンタサイクルやベーグルがおいしいカフェ、レンタルスペースやシェアオフィスなど、小さなテナントが多数入居する「冷泉荘」には、名物管理人が駐在していることで有名だ。フィギュアや古いレコードなど、さまざまな古いサブカルチャーグッズが整然と飾られている管理人室には、スペースRデザイン(福岡市中央区)の杉山紘一郎氏が常駐している。
九州大学大学院で「エオリアン・ハープ」を研究していた杉山氏は、実験の場所を求めているなかで、「冷泉荘」のオーナー・吉原勝己氏と出会ったことがきっかけだ。その後「冷泉荘」のイベントなどに携わるようになり、管理人補助を経て平成22年に管理人を引き継いだ。業務の内容は、入居促進や清掃・保全、入居者のコミュニティ活性化などから、地域との対応や、「冷泉荘」でのイベント企画や活性化などまで、実に広い。また、古い建物に関する活用法の模索や啓蒙活動も行う。
「やりがいは、『冷泉荘』の建物や活動、入居者の方を気に入ってくれる人が増え、さまざまな出来事やものが集まってくることです」(杉山氏) このような活動は昨年福岡市から「福岡市都市景観賞 活動部門」を受賞した。また昨年杉山氏は、九州工業大学の准教授や研究室学生からのヒアリングを受けるなど、アカデミックな方面からも注目されている。そのなかで杉山氏は「管理人としての役割は」という質問に対し「『冷泉荘の価値を上げること(空室やレンタルスペース、シェアオフィスの入居促進、入居者間のコーディネート、メディアに出ること、レンタルスペースの活用)』と回答している。また、管理人として最も大切にしていることは「コミュニケーションにおける距離感の取り方」とのこと。 普段の服装が個性的である杉山氏だが、人に覚えてもらえるよう気を付けて派手にしているそうだ。福岡のレトロビルの名物管理人は、杉山氏自身の細やかな気遣いや目に見えぬ努力により、その地位を確立したと言っても過言ではない。(顔写真:(c)雨宮康子)