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建築研究所 長周期地震が与える建築物への影響を調査・研究 信頼性高い予測手法の開発につなげる

2013.12.02 15:53

 平成23年の東日本大震災発生時、超高層ビルの揺れを生じさせたことで知られる長周期地震動。この長周期地震動は、大都市が発達しやすい堆積平野で卓越する増幅特性を有し、地震動の継続時間が短い周波数の地震動と比べて継続時間が長い特徴を持つ。前述したように、先の震災発生時においては超高層建築物や免震建築物が共振し、過大な変形と多数回の繰返し震動が生じたことから、建築物の長周期地震動への対策の重要性が伺える。建築研究所(茨城県つくば市)では、「建物応答に関する研究開発」及び「入力地震動に関する研究開発」を進め、11月29日、千代田区霞が関の国土交通省住宅局会議室にて行われた専門紙記者との懇談会において、これまでの研究成果を発表した。
 「建物応答に関する研究開発」では、長周期地震動を受ける超高層建築物及び免震建築物の構造安全性に関する実大実験を実施。また、「入力地震動に関する研究開発」では、観測データに基づく観測点固有の地盤増幅率とサイト係数の算定、地震基盤までの深部地下構造に起因する卓越周期を考慮した任意地点における係数の算定といった、設計用長周期地震動算定に関する手法の骨子を作成した。そして新たな成果として、従前の予測手法を改良し、任意の建設地点での設計用長周期地震動の予測手法を開発。この予測手法は、モーメントマグニチュード(地震モーメントの大きさをマグニチュードに換算した、より正確な地震の規模を示す単位・Mw)が5・9から8・2までを対象地震規模とし、震源の深さ60km以下の地震(震源)に対して、断層最短距離20~400kmを満たす地点の設計用長周期地震動を予測するというもの。
 この手法を用いて、今後発生が予測される南海トラフ巨大地震に関して、東京・大阪・静岡など特定地点の地震波を予測し、プロトタイプ建築物に関して応答レベルを確認。内閣府が平成22年に公表しているマグニチュード9・0クラスの南海トラフ4連動地震との比較において、長周期地震動の妥当性を確認した。同研究所構造研究グループ上席研究員の小山信氏は「この長周期地震動予測手法の適用条件については、内閣府等のシミュレーション結果との比較の後、首都直下地震に対する適用範囲の拡大を検討しています。現状では断層最短距離等が該当しないなど、適用条件を満たさない範囲が大きく、地盤増幅率やサイト特性の更なる検証が必要であると考えています」と述べている。




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