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不動産中央情報センター 築80年の長屋を店舗として再生

2014.05.12 16:54

 築80年の木造平屋建ての長屋住宅を店舗へリノベーションする工事が、間もなく完成を迎える。
 同物件が立地するのは北九州市門司区の、JR「門司」駅からほど近い住宅街。昨年12月に最後の住人が退去した後は取り壊される予定となっていた。しかしその基礎には「鋼滓(こうさい)レンガ」が使用されるなど、現在では貴重といえる建物でもあった。
「鋼滓」とは金属を精錬する際に排出される一種の廃棄物。製鉄は北九州市の基幹産業でもあり、鋼滓の排出量は膨大なものとなる。その活用策の一環として開発されたのが鋼滓を原材料としたレンガであり、現在はほとんど目にすることがないばかりか建築基準法では建物基礎に使用することも認められていない。建築基準法が制定される15年以上前に建設された同物件は、まさに北九州の歴史を語る存在だったのである。
 オーナーは取り壊し以外の活用策を模索し、タムタムデザイン一級建築士事務所(北九州市小倉北区)がリノベーションを、不動産中央情報センター(北九州市小倉南区)が運営を手掛ける店舗「アルコーブ風呂乃井」として生まれ変わることとなった。名称の「風呂」とは同物件が立地する地区の旧称で、安徳天皇が浸かる風呂の水をこの町にあった井戸から汲んだことに由来するという。町の古称を残したいという思いと、新しい入居者が浸かるイメージから「風呂乃井」と命名された。
 建物は、それぞれ2室を有する2棟が街路の手前と奥に配された構造。2棟をウッドデッキでつなぎ、4室すべてを店舗仕様に改装した。43・6m2から46m2までの4室で、賃料は月額4万円から5万円。いずれもトイレや流し台が付いており、手前の貸室は雑貨店や飲食店、ギャラリー、奥の貸室はエステサロンや美容室などとしての使用を想定している。
 オープンは今年夏を予定しており、5月16・17日には入居希望者を対象としたオープンハウスが開催される。時間はそれぞれ11時からと14時からの2回。各回とも定員は10名で、集合場所はJR「門司」駅となっている。




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