週刊ビル経営・今週の注目記事

毎週月曜日更新

大林組 柱梁接合工法「新型ウィングビーム工法」を開発

2015.04.06 12:33

 大林組(東京都港区)は、同社開発技術である鉄骨造建物の現場溶接型の柱梁接合工法「ウィングビーム工法」を改良し、巨大地震に対する破断リスクを大幅に低減した「新型ウィングビーム工法」を開発・適用したことを発表した。
 鉄骨造建物では柱梁接合部の破断リスクの大きさが耐震性能を大きく左右する。一般に、柱に対して梁のフランジを工事現場で溶接し、ウェブを高力ボルトで接合する「現場溶接型」の柱梁接合は、「工場溶接型」に比べ材料や製作のコストを抑えることがで きる。
 また、柱から梁への突出部(ブラケット)がないため、保管が容易で、輸送コストが低減できるというメリットもある。しかし、平成7年に発生した阪神・淡路大震災では、工場溶接型に比べ現場溶接型の柱梁接合部に相対的に多くの被害が発生した。
 大林組は、この地震被害を教訓として経済性を保持したまま現場溶接型の柱梁接合部の耐震性を向上させるため、台形型の水平ハンチをフランジの梁端部に設けた「ウィングビーム工法」を平成11年に開発し、これまで多くの建物に適用してきた。
 しかし、近年は首都直下地震や南海トラフ地震など巨大地震への懸念が高まっており、より大きな揺れに耐える工法が求められている。また、平成23年に発生した東日本大震災を受け、超高層建物に大きな揺れをもたらす長周期地震動や長い時間にわたって 揺れ続ける長時間地震動も懸念され、揺れの大きさに加え、揺れの繰り返しに対する性能も重要になっている。
 同社が今回開発した「新型ウィングビーム工法」は、現場溶接型の経済的な利点を保持したままハンチ形状を改善することで耐震性がさらに大きく向上。経済性と最高レベルの耐震性を両立させた柱梁接合工法となっている。建物の要求性能と経済性に応じた 使い分けができるように、経済性と耐震性を兼ね備えたタイプIと、さらに高度な耐震性を追求したタイプ2.、タイプ3.の3タイプを用意した。現場溶接型ストレート梁と同程度のコストで高い耐震性能を有するタイプIと、タイプIよりさらに高耐震性を追求したタイプ2.は、主に圧延により成形されるロールH形鋼から製作し、タイプ3.は主に鋼板を溶接で組み立てるビルトH形鋼から製作するため大小さまざまな梁断面に対応することができる。
 検証実験の結果から、「新型ウィングビーム工法」の耐震性能は一般的な現場溶接型ストレート梁と比較して揺れの大きさに対し最大約4・5倍、従来のウィングビーム工法と比較しても最大約3倍にまで向上した。さらに、長周期地震動で問題となる揺れの 繰り返しに対しては、現場溶接型ストレート梁と比較して最大約11・6倍、従来のウィングビーム工法と比較して最大約4・8倍に向上した。「新型ウィングビーム工法」を適用することで、柱梁接合部の被害リスクを大きく低減でき、巨大地震などに対する建物の安全性を高めることが可能となった。
 地震時は梁端部に大きな荷重がかかるが、場溶接型ストレート梁の場合は梁端部で強度を確保すると梁端部以外は必要以上の断面の大きさとなっている。「新型ウィングビーム工法」は大きな荷重がかかる梁端部の断面のみを水平なハンチで増加させ強度を確 保することで、より断面の小さい鋼材を使用した設計が可能だ。その結果、梁の鉄骨量が減少するため、従来のウィングビーム工法と同様、現場溶接型ストレート梁と同程度のコストとすることができる。
 また、新型ウィングビーム工法は、建物規模による制約はなく、さまざまな建物に適用することができる。既に、大林組東京機械工場事務所棟(埼玉県川越市)をはじめ、オフィスビルや製薬工場にも適用されている。同社は、今後、新型ウィングビーム工法 を積極的に提案し、災害に強い、安心・安全な街づくりに貢献していく。

PAGE TOPへ