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アオイネオン 看板の落下事故を未然に防ぐ 劣化状況を診断・データ化する新システム

2015.08.24 15:56

 今年2月、札幌市で飲食店舗の看板が突如落下し、通行中の女性に直撃するという痛ましい事故が起こったが「こうした看板落下事故が今後頻発する可能性は大いにある」と指摘するのは、看板等の設計・制作・施工を一貫して行う一級建築事務所アオイネオン(東京都大田区)の荻野隆氏だ。
 「これまで看板を設置するには建築基準法や屋外広告物条令など法令に基づいて申請を行う必要がありますが、無届けの看板が非常に多く、点検もしていないのが現状。ビルの外壁に設置した袖看板等は風雨にさらされ、10年~15年で劣化してしまいます」(荻野氏)
 また、屋外広告物許可申請が必要な看板の大きさは行政区によって異なり、東京では5㎡以下、場所によっては10㎡(10m×1mサイズ)でも申請が不要となる。これらの看板が直撃すれば命に危険があるのは明白だが、定期的にメンテナンスをしているとはとてもいえない状態だ。
 看板のメンテナンスは喫緊の課題といえるが、その危険性については理解が進んでいない。そうした中、アオイネオンでは看板の劣化状況を診断するシステムとして「看板ドクター」と、看板のメンテナンス履歴等をデータ化する電子カルテ閲覧システム「看板マネジャー」を開始。「看板」を切り口に安全かつ持続可能な街づくりに貢献するための取り組みだ。
 「看板ドクター」では通常の目視だけでは確認できない看板内部の腐食を調査するもの。内視鏡カメラスコープや赤外線サーモセンサー、マイクロスコープ等を用いて内部鉄骨の腐食、構造材の減肉、アンカーボルトの引き抜き検査等を行い、看板落下等の危険性をレポートにまとめてくれる。加えて「看板マネジャー」では管理している看板をデータベース化し、「看板ドクター」による診断をもとに統一基準で看板の劣化度を評価することが可能。修繕優先リストを作成し、修繕計画や年次予算計画の作成をサポートする。この2つのシステムによって、多くの看板を一元的に管理できるようになる。
 「ビルと同様にバブル期に屋外看板が多数設置され、早20年が経過しようとしています。日常的に点検がなされていないこれらの看板の劣化が進み、今後は落下事故の危険が高まることが予想され、ビルオーナーは社会的責任の観点から看板の落下事故を未然に防ぐための対応が求められているのではないでしょうか」(荻野氏)




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