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新しいオフィスのあり方 テンプホールディングス編
2016.03.28 16:42
組織体制の再編に併せ事務所機能の効率化図る
オフィスは従来型の空間に働き手が迎合するという考え方から、働き手のパフォーマンスを最大限伸ばせるオフィスのあり方を模索する方向へとシフトしている。今回紹介するテンプホールディングスの事例は、企業の転換点を迎えるにあたってスタッフの働き方を改革。同時にオフィスという空間をより生産性を高める場所へと進化させている。
人材派遣大手のテンプスタッフをはじめとするグループ会社80社を束ねているテンプホールディングス(東京都渋谷区)。平成25年4月にインテリジェンスホールディングスの全株式を取得して子会社化を実施。組織体制の再編に併せ、グループの統合的なファシリティマネジメントに取り組んでいる。
テンプグループではこれまで、M&Aを通じて事業規模の拡大を図ってきた。一方で事務所移転や総務・経理関連の業務は各社の個社対応に委ねられていた。グループ人事FM本部の槌井紀之氏によれば、人材派遣業は登録や説明会等で広範囲からの来客があるため、事務所はターミナル駅周辺に集中しやすいという。以前は一つの駅周辺でグループ各社が複数のオフィスビルに分散して入居するケースが多く、コスト面に加え連携すべき各社間の意思疎通やコミュニケーションにも課題を抱えていたようだ。
「かねてよりインテリジェンスグループではファシリティマネジメントを経営機能の1つとして活用してきました。FMに注力しているインテリジェンスグループが傘下に加わったことで、テンプグループはそのFMノウハウをグループ経営全体に拡大活用できる状況になりました」(槌井氏)
各社が個別に行っていた入居ビルへの賃料支払などのファシリティコストは、事務を代行するグループ会社を通じて一元管理。年間のファシリティコストを過去の実績データなどから算出し、各社に分配する「事前コストチャージ方式」を採用している。これによって、グループ各社は本来の主たる業務に専念し、コア業務にリソースを集中させることが出来る環境が出来上がった。また、同一エリアに分散していたグループ各社のオフィスを集約。一棟のビルにまとめることで賃料の単価を低減させるとともに、各社のシナジーを生み出す結果を出した。
「大阪・梅田周辺の例では、分散していたグループ各社の事務所を『グランフロント大阪』に集約しました。新オフィスには会議や面談など、様々な場面に応じた多目的スペースを設けています。この多目的スペースはノンリザーブで利用できる形態をとっており、利用目的に応じて、使用するスペースを自主的に選択することが重要であると考えています」(槌井氏)
テンプグループは全国に約400の拠点を現在構えている。槌井氏率いるグループFM部は年間80億円にのぼる各社・各拠点のファシリティコストを一括管理。FM機能を通じて蓄積したベンチマークを活用してファシリティコストを振り分けるため、その誤差は1%程度であるという。「人と組織の成長創造インフラへ」を企業ビジョンとする同グループにあって、槌井氏は「FMの有効性を肌で感じて頂くために、ワークスタイルのあり方も含めて訴求できる企業を目指したい」と話す。将来的にはFMサービスに特化した事業会社の設立をグループ内で検討しているとのことだ。