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ビル業界を革新する「異能(イノ)ベーター」 コンサル編
2016.06.06 10:24
企業側に立った不動産コンサルティングを展開
「すべての遊休地を蘇らせる」ことを目指し手掛けたプロジェクトは学会で発表
茗溪不動産(東京都千代田区)の東堂英雄社長は大学卒業後、積水化学工業に入社。不動産・総務部門を経て土壌汚染調査会社転じ、不動産活用の目線から環境問題に取り組み大手開発業者のコンサルとして活躍した。その経験を生かして「すべての遊休地を使えるようにする」ことを目指し、不動産コンサルティング会社を設立した。社名の「茗溪」は母校筑波大学の同窓会名に因み、大学発ベンチャー企業として公認されている。
そんな東堂氏は現在「日本不動産学会」をはじめ環境・法律・不動産系の複数の学会に所属し、2年に1度の研究発表を自らに課している。業界にあっては異色の学究肌の存在だ。
東堂氏は「研究のネタ探しのために実務を行っていると言っても過言ではない」とうそぶくが、得意とするのは企業や自治体が保有する遊休不動産を有効活用するためのコンサルティング。かつて企業の不動産・総務担当者であった経験を生かし、企業側に立った不動産戦略の立案・実行までワンストップで提案し実践する。
「不動産会社の収益が最優先されるケースが多々ある。不動産を保有する企業の収益を第一に考える会社を造りたかった」(東堂氏)
不動産仲介会社はより高額な手数料を得るため、不動産の売却価格の多寡を重視する。対して企業の売り手の窓口となる総務担当者にとっては、必ずしも高く売却できればよいというものではない。例えば上場企業などの場合、不動産売却による株価への影響も考慮しなくてはならない。東堂氏はかつての実務体験から、その辺りを重々承知している。曰く、「不動産を高値で売却できたとしても、不動産アナリストに『一過性の特益』と指摘されると株価に影響を及ぼしかねない。不動産の売却価格自体は安くても、本業へのメリットに関わる企業に売却したほうがいい。買い主の与信を含めて、取引金額とは異なる点を重視することこそ肝要」。企業不動産ならではの在り様に添ったベストな解答を導き出すことに東堂氏は重きを置く。
企業の不動産戦略をサポートする他、現在は企業誘致に積極的な地方自治体との連携も強化。より地域貢献に役立つ開発プランを提案している。東堂氏は「マンションを開発しても、地域住民が喜ぶとは限りません。例えば商業施設の一角に自治体の相談窓口を設置すれば住民の利便性は向上するでしょうし、水資源に恵まれた場所ならば水に因んだ工場を誘致して地域ブランドとして製品を育てていくのもいいでしょう」と一案を披露する。
現に工場移転をサポートした際、地盤調査から工場建設のための助成金獲得まで数多くの項目について法務・実務運用に照らしながら移転先候補となる行政と協議を重ね、速やかな受け入れ態勢を構築することに成功した。
第三者の立場から企業の不動産戦略に関わり、ブレーキにもアクセルにもなれる希有な存在。プロジェクトの成果は学会等で発表し、不動産学の発展に生かしていくという。