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<ご意見番>渋谷ほけん情報センター 民泊における保険の問題点
2017.06.12 17:43
住宅用火災保険は適用外 保険会社への告知義務違反で保険金下りず
外国人観光客がマンションに出入りする等、民泊に関するトラブル事例は数多く報告されているが「不動産オーナーが被る被害として『盲点』となっているのが保険の問題」と指摘するのが、渋谷ほけん情報センター(東京都渋谷区)の代表取締役、茂呂由勝氏だ。
「一般的にマンションの一室を民泊事業者が借り上げ、民泊事業を開始する場合、住宅用の火災保険に加入するにとどめている場合がありますが民泊物件は事業用(一般物件)扱いとなるため、住宅用火災保険の対象外になります」(茂呂氏)
住宅用火災保険の約款では民泊(事業用途)は適用外になる。仮に火災が発生した場合、保険会社への告知義務違反となり、保険金が支払わられない可能性が非常に高くなるという。茂呂氏は「これを知らずに運営している民泊事業者はまだまだ多い」と指摘する。
オーナーにとっては難しい問題だ。そもそも入居時に民泊を行うことをオーナーに報告しない民泊事業者も存在する。事業用物件(テナントビル)では基本的に一般物件用の火災保険が適用されるが、SOHO仕様や複合ビルでは住宅用保険を適用したままというケースも考えられる。
一方、民泊に関する法整備が進み、この火災保険の問題を解決する商品も登場している。例えば、三井住友海上が展開する一般物件用保険「ビジネスキーパー」が挙げられる。設備・什器等の物損害に対して支払限度額100万円まで補償し、合計保険料が年間7000円弱と使い勝手が良い商品設計になっている。しかし、茂呂氏によると「実は加入数はまだまだ伸びていない」とため息をつく。というのも「保険料が安いため、販売手数料が見込めず、保険代理店が積極的に販売しているとは言い難い」(茂呂氏)のが現状だという。
リスク対策として事業者はあてにならない。オーナーが自ら動くべきだろう。