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「爆買い」は今 海外不動産投資を抑制する中国 投資家の数は減少傾向に
2017.09.25 10:48
中国人観光客の「爆買い」特需に沸いた日本だが、その勢いも今や昔。不動産投資市場にも波及しているという。中国をはじめとしたアジア圏の投資家向けに日本の不動産を紹介しているウォームライト(東京都中央区)代表取締役社長の桂小川氏に聞いた。
―日本の不動産市場における中国人投資家の動向
2009年6月に設立し居住用物件の賃貸管理会社としてスタートした当社だが、22年末頃からアジア圏の海外投資家への仲介業務に注力している。安倍政権の誕生によって円高が是正され、海外投資家の投資意欲が増したためだ。ただし、当時は台湾在住の投資家の独壇場で、中国本土の投資家の反応は皆無。当時の台湾は不動産価格が高騰する半面、賃料収益が伸び悩んでいた。そこで目をつけたのが利回りが高く、距離が近い日本市場。しかし25年夏頃になると投資価格が上がり、為替の旨味がなくなってきたため、投資熱は一気に冷めてしまった。台湾の5つの銀行が東京へ支店を構えているが、不動産向けの融資を活発に行っているのは3行のみ。最盛期から見ると投資実績は3分の1~4分の1以下まで冷え込んでいるように思われる。一方、彼らに替わって台頭してきたのが中国本土の投資家だ。
―なぜ中国本土の投資家の動きが鈍かったのか
理由は国内の投資環境が好調を維持していたためだ。実際に中国へ渡り、中国人投資家に接触してみたが、誰も日本に興味を示さなかった。25年夏に株式市場の暴落が始まり、初めて痛みを感じたため分散投資の重要性に気づかされたことで、日本に目を向けるようになった。台湾投資家は利回り重視で攻めの姿勢が強い。表面利回りは最低でも7%以上が目安。それ以下では見向きもしない。一方、中国本土の投資家はあくまで資産分散が目的で保守的だ。投資利回りよりも安全性を重視して海外へ投資している。アメリカ、オーストラリア、イギリスにはずいぶん以前から投資しており、日本は最後尾といえる。
―「爆買い」の始まり
訪日観光客の増加に伴い不動産も中国人による「爆買い」が喧伝されたが、そこまで派手に投資しているという感覚はない。中国では国外への資金流出に対して年500万円まで規制がかけられており、日本で取得できる物件数自体はたかがしれている。今年6月に訪中し関係者にヒアリングしたが、今後は海外不動産の取得自体を禁止することも検討しているとの話だった。そのため、日本の不動産投資市場において中国人投資家はまだまだ少数派に過ぎない。
―規制で投資が減る
当社はこれまで投資家と密接な関係づくりを行ってきたため、成約数はまだまだ高いレベルを維持できている。物件の紹介から売買仲介、取得後の管理サービスまでワンストップで提供しているので信頼力があるからだ。しかし海外投資を抑制する中国の流れは変わらないのではないか。今後は中国人投資家の数は減少傾向になるだろう。