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地盤ネット総合研究所

2018.03.05 13:02

「JIBANGOO®」で空き家物件掲載開始 「地盤」の再発見で不動産価値の多様化へ
 都心から離れている。最寄り駅からも遠い。そんな空き家も「地盤」という視点から捉えると、従来の不動産価格以上の価値を持っているケースも少なくないかもしれない。
 地盤ネットホールディングス(東京都中央区)の子会社である地盤ネット総合研究所(東京都千代田区)が展開する「JIBANGOO(R)」がスタートしたのは昨年2月。約100社の不動産企業と提携。物件を掲載し、エンドユーザーとつなぐプラットフォームの役割を果たす。利用者はこれまでに6800人以上が会員登録を行い、500件以上が成約している。
 その「JIBANGOO(R)」サイトに今年1月から空き家物件の掲載を始めた。自治体が運営する「空き家バンク」への掲載情報について許可を得てから掲載していくという。利便性に欠ける空き家物件を不動産市場で再流通させるのは至難の業。しかし同社が提唱する「地盤」という視点から見ると、「空き家」は「お宝物件」に化ける可能性を持つ。
 代表取締役の山本強氏は「『地盤』という視点はこれまで不動産業界で見落とされてきたところ」と強調する。駅近、都心立地だけで選択する傾向が多いが、海抜の低さは大きいリスクとなる。そのリスクが顕在化したのは東日本大震災。首都圏でも液状化現象が発生した。地震など自然災害の多い日本に住む上では都市型物件は実はリスクと隣り合わせていると言える。
 そのなかで地盤ネットホールディングスグループでは早くから「地盤」による不動産の評価の見直しを行ってきた。
 2016年8月よりユーザー向けに地盤情報の提供を開始したのに始まり、所在地の地盤災害情報を調べることのできるアプリ「じぶんの地盤」の登録者は17万人に及ぶ。山本氏は「地盤がどうか気になっている人は多く、まだ潜在的なニーズはあるのでは」と話す。裏を返すと、現在の住宅物件が立地する場所は地盤の安全性が低いところが多いということもできる。
 日本には5000万の世帯があると言われている。「そのなかの7割、3500万世帯は地盤災害のリスクにさらされている」(山本氏)という。だからこそ、同社では「最終的な目標」として「3500万世帯の大移動」を「JIBANGOO(R)」で実現することを掲げている。
 そのための仕掛けも欠かさない。空き家は数年間、管理が放置されてきたものも多く、見た目が悪いケースも多い。「そこでリノベーションや建て替え後のイメージを映像等で掲載できる仕組みも検討している」(山本氏)。空き家物件のため価格は安く、加えて自治体によっては移住することでの補助金をつける例も多い。
 現在、「JIBANGOO(R)」はユーザー、掲載する不動産企業側からも料金をとっていない。「より『地盤』という観点を広め、掲載物件数を増やしていく」(山本氏)ためだ。「どのようにマネタイズしていくか」は同社の課題だが、不動産事業者、ユーザーからの満足度は高く、今後は空き家オーナーと住宅購入希望者をマッチングするCtoCビジネスへの発展も見込まれる。
 「安心安全」は日本の様々な分野で追求されている。不動産業界においてもビル・住宅問わず「安心安全」を確保した物件の提供が求められている。立地やコストを重視し、これまで見落とされてきた「地盤」という視点。その再発見は「優良物件」の多様化をもたらすかもしれない。




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