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成長企業分析 ビーロット インバウンド商品開発を着々と展開

2018.05.21 14:49

不動産価値の創造目指しアクセル踏む
 訪日観光客が3000万人に迫りホテル開発の勢いは衰えない。そのなかでビーロットは一歩先へと地方観光都市での開発および新たなアセットの価値創造へと乗り出している。

 不動産投資開発事業を取り組むビーロット(東京都港区)がインバウンド商品開発を着々と進めている。4月、新たに2棟のホテルをオープンさせた。
 ひとつは「ホテル・トリフィート小樽運河」。4月20日にグランドオープン。客室数128室で、小樽エリアで100室超の新築ホテルは、約9年ぶりの供給となった。オペレーションはABアコモ(東京都千代田区)が担う。もうひとつは4月24日にグランドオープンした「ティサージホテル那覇」。運営はネストホテル (東京都港区)。那覇空港から車で10分、沖縄都市モノレール「旭橋」駅から徒歩9分の場所に立地する。
 同社取締役不動産コンサルティング本部長の外川太郎氏は「北海道、沖縄ともに近年、急速に観光需要が伸びています。地価公示でも上昇率が全国でトップクラスのエリアです」と話す。同社が、ホテル開発の計画を事業決定したのは約2年前、満を持して竣工を迎えたプロジェクトとなる。「沖縄での開発は、当社にとって初めて。まだ、販売を開始していないが、海外ファンドを含めて問い合わせが多い」と期待を寄せる。
 同社が宿泊施設の開発を企画し始めたのは2013年。「ファーストキャビン築地」の2015年のオープンを皮切りにして、全国主要都市・観光都市での開発。2017年1月にはカプセルホテル運営事業者であるヴィエント・クリエーション(東京都渋谷区)を完全子会社化。既存ホテルの不動産再生にも投資を行い、2017年12月に「ドシー(℃) 恵比寿」、今年4月には「ドシー五反田」としてリノベーションを行った。
 中規模以上のホテルの供給を行ってきたビーロット。一方で大阪では変化球を投げた。 2017年8月に同社が取得した大阪市北区中津のマンションを特区民泊対応型マンション「メゾンミラノ中津」として完成したことを発表。
 「今回の特区民泊対応マンションは投資用不動産の商品ラインアップ拡充の一環で、当社にとっては新たな挑戦になる。ホテルとは異なる特長で浸透を図っていきたい」と外川氏は語る。
 6月15日に住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行が控える。従来より民泊事業を展開してきた事業者や個人運営者は営業日数を「年間180泊以内」に制限されたことをネックと見る向きもある。ただ同物件は特区民泊に対応しているため、年間営業日数の縛りはない。
 「同物件取得時の稼働率は50%程でした。合法的なマンション再生の新たな形として高い稼働を実証できれば、投資家にとっても魅力的な商品となる」(外川氏)
 ホテル・宿泊施設が業界内で盛り上がりを見せるなか、いち早く市場に参入してきたビーロット。現在は、新しい成長アセットへの投資スキーム模索も続けている。3月には、茨城県笠間市の太陽光電力発電所を取得、4月には若洲ゴルフリンクスなどの運営を受託するゴルフ場運営会社のティアンドケイ(東京都港区)を子会社化。5月15日には、投資用不動産の取得とM&Aのための資金需要を背景に、約30億円の資金調達を目的とした新株予約権の発行も発表。取扱い不動産のみならず、業務のチャネル幅を広げる施策を次々に打ち出した。
 外川氏は「当社は、ベンチャー企業としてユニークな不動産再生、商品の企画・開発について、時代の潮流に先駆けていける自負がある。今後も、パートナー企業とともに、新たな不動産価値の創造、新しいアセットタイプの開拓を目指していきたい」と語る。2018年2月2日より東京証券取引所第一部へ市場変更を果たしたビーロット。その一挙手一投足に不動産投資家、株式投資家の注目が集まる。




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