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ヤマハ 働き方改革に着目「音」にこだわる新しいワークプレイスを提案

2018.06.18 16:59

 政府が推進する「働き方改革」によって、企業やオフィスのあり方に大きな変化が訪れている。企業は勤務体系の見直しを行うなどして、子育て・介護と仕事の両立といった個別の社員の事情に合った働き方を推奨する動きが広がっている。また、オフィスでは時間と場所にこだわらない自由な働き方としてシェアオフィスやコワーキングスペースの数が急増し、業務の効率化や生産性の向上を後押ししている。オフィスのあり方が変化を遂げていく中で、「音環境」のソリューションに着目した企業も登場している。楽器と音響機器のメーカーとして知られるヤマハだ。

 出張先や移動中などでもモバイル機器を用いて業務を行うテレワークが、働き方改革の中で注目を集めている。この流れに対応するように、テレビ会議システムなどのソリューションサービスを展開しているブイキューブ(東京都目黒区)が昨年8月、電話ボックスサイズのブース「テレキューブ」を発表。インターネットを介してウェブ会議やパソコンでの一人作業ができる空間として、公共施設を中心に導入を加速させている。また、今年4月には東京地下鉄(東京都台東区)と富士ゼロックス(東京都港区)が共同で、東京メトロ駅構内に個人専用の小型ブースを配置する「サテライトオフィスサービス」の実証実験を開始した。主に公共空間を活用しての「新しいタイプのワークプレイス」が登場している中、これらに共通しているのが業務に集中できる「音環境も考慮した『こもり部屋』タイプ」である。ヤマハはこの「新しいタイプのワークプレイス」に着目。独自の音技術を用いたソリューションの提案を進めている。
 ヤマハは楽器と音響機器の製造・販売を手掛け、音に精通した企業であると同時に、防音対策に関する商品開発も30年以上の歴史を持つ。これまでは楽器演奏を行う空間や研究施設などでの外部への音漏れを防ぐ目的で、防音対策に資する商品提案を行ってきた。しかし近年では機密事項を話し合う会議の場など、オフィス空間での防音対策に関する問い合わせや要望が増えているという。同社音環境グループの金子勇氏は次のように話す。
 「室内の音の反響によって会話が聞き取りにくい、周囲への声漏れといったオフィスの音環境トラブルは数多く存在します。特に昨今はシェアオフィスやオープン化されたオフィスが増え、執務スペースの仕切りが簡素になっている空間が多く、会話の内容が周囲に聞こえてしまうのではないかという心配の声が多く聞かれます」
 金子氏によれば、オフィスの音環境トラブルの解消には音漏れを防ぐための防音に加え、室内の音の拡散反響を抑える吸音も重要であるという。同社では防音室「アビテックス」や、独自の音声処理技術で発言者の音声を高い明瞭度で通話先に届ける遠隔会議用のスピーカフォン、人の声から合成した情報マスキング音が会話の音声を包み隠す「スピーチプライバシーシステム」と、オフィスの音環境改善に貢献するソリューションを、場面ごとに合わせて提案している。
 今後ヤマハでは前述のようなオフィスの空きスペースを活用した、ワークスペース向け音環境ソリューションの普及促進を目指す。今月28日に港区港南の日本マイクロソフトで、ICT及び不動産事業者向けの「新しいタイプのワークプレイス」セミナーを開催し、オフィスの音環境ソリューションを紹介する予定だ。(入場無料。「ヤマハ音楽環境製品」ホームページから申込可能)




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