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新ルール策定で変わるソーシャルレンディング業界

2019.06.03 18:14

ロードスターキャピタルは情報開示進める方針
 「OwnersBook」を手掛けるロードスターキャピタル(東京都中央区)は5月29日、第二種金融商品取引業協会から「貸付型ファンドに関するQ&A」が発表されたことを受けて、「OwnersBook」の貸付型案件における情報開示の方針を取りまとめた。これに先立って、22日にはメディア向けの勉強会が開かれた。
 同社はこれまで「OwnersBook」の貸付型案件において、「貸付条件(貸付金額、金利、貸付予定日、貸付期間)」と「回収可能性に影響を与える情報(担保不動産の大まかな所在地・評価額・物件概要)」だった。今回新たに開示する情報として、「借入人の財務状況又は財務情報の概要」、「借入人に債務超過、返済猶予を受けている等の事実があるか否か」を加える。また借入人に対して、「担保不動産の物件名、所在地」、「法人名」の開示を促していく。
 これまでソーシャルレンディングでは、貸付先に関する匿名化・複数化の指導があった。貸付先を特定することができる情報を明示せず(匿名化)、複数の借り手に対して資金を供給するスキームであること(複数化)を求められてきた。  一方、関係者の間では一定の問題をはらむものとして認識され、同社や関係協会、関係団体は継続的に当局へ見直しの働きかけを行ってきた。
 これら延滞や行政処分が相次いだため、2018年12月には証券取引等監視委員会から内閣総理大臣および金融庁長官に対して建議が実施されるなど、匿名化・複数化の課題が広く論じられてきた。
 そこで2019年3月11日、同社と関係団体がノーアクションレター(行政に提出すると一定期間内に適法か違法か回答してもらえる制度)を提出。18日に回答があり、新しい解釈がなされた。新解釈では「借り手が法人」、「事業スキームは商法上の匿名組合契約によるもの」、「投資者と借り手が接触を禁止する措置が図られている場合」を満たすことで借り手の情報を開示することも可能になった。これにともなって自主規制団体である第二種金融取引業協会は5月23日、「貸付型ファンドに関するQ&A」を発表。協会員がソーシャルレンディング事業を行うにあたり守るべき新たなルールとなった。今後ロードスターキャピタルでは借入人へのコミュニケーションや法定書面の条件変更等の改定手続きを進めていく。
 代表取締役社長の岩野達志氏は「今後情報開示が進むことで、投資家は有益な情報が開示されている案件に投資するようになっていくでしょう。情報開示できる案件では利回りが下がり、できない案件では利回りが高まっていくことが予想されます。運営会社には調整能力が求められるとともに、世の中のニーズに対応できる運営会社が選別されていくことになるのではないでしょうか」と話す。
 ソーシャルレンディング、クラウドファンディングがさらに伸びることができるか。今回のルール改正にともなう各社の動きとともに、注目していきたい。




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