週刊ビル経営・今週の注目記事

毎週月曜日更新

伊藤テクノ 空調企業から「空気の総合商社」へ

2019.06.10 14:19

人材確保・育成注力し全国展開備える
 空調設置工事をメーンに、メンテナンスなどを展開する伊藤テクノ(東京都葛飾区)。2013年創業の若い企業ながらも年間3000台の取り付けを行い、メンテナンスは年間1200件こなす。2019年度の売上高8億円を見込む。5年後には年商50億円と上場を狙う同社の戦略に迫る。

 創業以来、業績を右肩上がりで伸ばしてきた伊藤テクノ。クライアントは法人がメーンで、比率は8割超。更なる成長に向け人材採用にも力を入れる。
 同社が業績を大きく伸ばす背景のひとつがサービスだ。たとえば設置取り付けを行ったエアコンの保証期間だ。メーカー保証が1年ほどであるのに対して、同社では設置・メンテナンス込みで「10年保証」を打ち出す。
 代表取締役社長CEOの伊藤丈史氏は「10年はメーカーが推奨しているエアコン使用の推奨期間です」と話す。「長期間使用してほしい」という思いをサービスに込めた。上場する保険会社と提携することで、このサービスを実現している。クライアントからの評価も高く引き合いを増やす要因にもなっている。
 テクノロジーを利用したサービスプランも検討する。今年1月、クライアントを対象に実証実験としてコミュニケーションツール「ヘルピー」の100個限定の配布を行った。これはIoTを利用した通信機器で、エアコンの不調があればボタン一つ押すことで修理が手配される。
 伊藤氏はこの「ヘルピー」について、「用途はエアコンだけではありません」と話す。たとえば「買い物難民」や「独居老人」などへのソリューションとしても利用することができる。「実証実験を終了して、『ヘルピー』を回収して更なる改善に取り組んでいます。当社では空調分野で利用していきたいと考えていますが、他社から別の用途で使いたいというニーズがあれば、積極的に応えていきたいです」と話す。
 伊藤氏は5年後の目標として「売上高50億円を達成するとともに、企業として上場を果たしていきたい」と語る。そのために現在注力しているのが人員拡大と全国展開、それを実現する体制作りだ。
 同社では3月に社内向けに「伊藤テクノスクール(ITS)」を開催。このスクールは職人に対し「名刺交換や身だしなみ、挨拶などのビジネスマナーを伝える」ことを目的としている。未経験者向けには実技研修も行えるよう設備を整えている。
 伊藤氏は「現在は首都圏での営業が核ですが、今後全国にエリアを広げていくなかで核となってくるのがITSです」と話す。全国展開の手法に関しては、同社の支店展開はもとより、フランチャイズ展開も検討している。ITSで理念やビジネスマナーなどを身に付けたスタッフがそのミッションを担っていくことになるわけだ。
 またサービスに関して、現在の空調企業からの進化を模索する。「空調のほかにアロマやオゾンなど、空気環境全般を商材として取り扱っていきたいと考えています」。オフィス、事業所内の空気環境を一気通貫で取り扱えるメニューを整えていく。
 業界環境は甘くない。空調取り付けやメンテナンスの需要はあるものの、高齢化や人手不足が直撃している。伊藤氏は「若い人が『3K』と考えて敬遠するのは、これまでの業界内の慣習も影響していると思います。伊藤テクノはそれを変えるような企業として、存在感を発揮していきたい」と話す。
 まずは「5年後」が勝負になりそうだ。




週刊不動産経営編集部  YouTube