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「(仮称)九段南一丁目プロジェクト」着工 「水辺に咲くレトロモダン」な17階建てオフィスに

2019.09.24 17:29

登録有形文化財「旧九段会館」の建て替えが遂に始動
 東急不動産(東京都渋谷区)と鹿島建設(東京都港区)が出資するノーヴェグランデ(東京都中央区)は、「(仮称)九段南一丁目プロジェクト」の新築工事に着手した。
 同プロジェクトは1934年竣工の「九段会館」の一部を保存しながら建て替えるもの。歴史的価値のある建物を生かしながら高度利用を図り、オフィスを中心とした複合用途の建物へと生まれ変わらせる。
 皇居外苑の堀に面した立地を生かし、新築部分の堀側を開放的な窓とする予定。さらに保存部分の屋上にはラウンジや庭園を設置。皇居外苑の自然を感じ、四季を楽しめるオフィスを計画する。
 旧九段会館は軍人の宿泊や福利厚生などに使用する「軍人会館」として誕生。226事件では戒厳司令部が置かれるなど、多くの歴史の舞台ともなってきた。戦後は進駐軍の接収を経て日本遺族会(東京都千代田区)の運営に変わり、ホテル、宴会場、レストランなどを擁する「九段会館」として再出発。レトロな雰囲気を持つ結婚式場としても親しまれたが、東日本大震災で被災し廃業。活用が模索されていた。建物は城郭風の塔屋を頂く帝冠様式の典型とされ、アール・デコの装飾の希少性や地域における象徴的存在としての価値が認められ、今年9月には登録有形文化財に登録されている。
 (仮称)九段南一丁目プロジェクトは「水辺に咲くレトロモダン」がコンセプト。8765㎡の用地に延べ床面積6万7738㎡、地上17階地下3階のビルを建設。オフィスや店舗などとして利用する。
 オフィスは基準階面積750坪、保存部分は創建時の姿を保存・復原し、内装にも当時の意匠を引用する。旧九段会館の宴会場「真珠」、「鳳凰」な内装を創建時の姿に復原し、一般利用が可能なカンファレンス施設として供される。
 健康経営やダイバーシティへの取り組みをビル全体でサポートする施策も用意。ランニングの拠点施設や仮眠室、食育に寄与する菜園などを設置するほか、各種の健康サポートイベントも開催する予定。ダイバーシティに関しては、礼拝室やオールジェンダートイレを設置。誰もが健康で自分らしく働けるビルを目指す。
 安心・安全のサポートも欠かさない。セキュリティについてはAIカメラを導入したシステムを構築。防災面では5日分の電力供給が可能な非常用発電機を設置するとともに、防災備蓄倉庫も用意。保存部分には免震構造、新築部分には制震構造と、建物の構造にも配慮した。
 さらに東急不動産がすすめる「グリーンワークスタイル」も採用する。保存部分の屋上に庭園を設け、メインエントランスには広場を、堀沿いにはテラスを設置。緑の力でオフィスワーカーの心身の健康維持・向上を図り、生産性向上への寄与にも取り組んでいく。
 プロジェクトの竣工は2022年7月を予定している。




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