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不動産CF新たな挑戦 業界初海外エクイティ投資型商品を発表 投資家向けのメニューを多様化

2019.10.21 14:02

 東証マザーズ大阪上場のロードスターキャピタル(東京都中央区)の主軸事業の一つは、不動産特化型のクラウドファンディング事業。同社が展開する「OwenersBook」は10月7日、海外エクイティ投資型商品の募集を開始した。国内のクラウドファンディング業界では初めての商品。代表取締役社長の岩野達志氏に経緯とこれからの展望について話を聞いた。
コネクション生かして組成 投資家は様子見も反響は大
 ロードスターキャピタルは2014年から、不動産特化型クラウドファンディング「OwnersBook」を展開している。2019年12月期第2四半期終了時点で、累積投資金額は121億6200万円、投資家会員数は2万681人に上っている。
 同社では2018年8月には国内エクイティ投資型商品第1号の「秋葉原オフィスビル」を発表。その後約1年の準備期間を経て今回、海外型商品の提供を始めた。
 今回の「US非上場eREIT第1号ファンド」は、米国で「eREIT」を展開するFundrise, LLC(ワシントンD.C、ファンドライズ社)の「Income eREIT」と呼ばれる米国の非上場eREITに投資するもの。米国各地の安定的な商業用不動産プロジェクトに対する貸付債権を中心にポートフォリオを組んでいる。各プロジェクトから得られる収益を主な配当原資としている。募集総額は目標4億9750万円。1口50万円単位から。予定運用期間は5年2カ月。予想分配利回りは4・51(税引き前)。
 岩野氏は「当社の筆頭株主であったRenren(中国)がファンドライズ社の株主でもあったことから、2014年頃からコネクションを築いてきました」という。今回の展開を目標にこれまでライセンスなど投資環境の整備を行ってきた。
 投資家の出足は「貸付型案件と比べるとスピード感が遅いというのが率直なところ」と話す。不動産特化型クラウドファンディングへの人気は高く、同社が発表する国内の貸付型商品は募集開始後数分で満額完了することもしばしば。今回の初の海外型商品は募集総額4億9750万円(最低目標募集額3億円)で10月7日より募集開始。10月16日の募集締め切りまでで3億3000万円の申し込みとなった。
 岩野氏は「これまでの国内貸付型商品と異なり海外エクイティ投資型となるため、投資家にとっても様子見の姿勢が強い感があります。また運用期間も5年と長期に及ぶ。これらのことが結果に反映されたのではないでしょうか」と分析する。
 一方、期待の強さも見せた。海外型商品の発表以後、個人、法人問わず新たな会員の流入が増加。株式市場も海外型商品進出を材料視している。それだけに同社としては「1号の運用を通して長期的に育てていく体制を整えていきたい」という構えだ。
ライセンス取得など煩雑 他社は追随難しいか
 ロードスターキャピタルは、エクイティ投資型の案件提供のため、第二種金融商品取引業、電子申込型電子募集取扱業務、および投資運用業の許認可登録をしている。海外型でもエクイティ性の投資商品提供のためには一連の許認可登録を必要とするが、国内のクラウドファンディング事業者で3つとも備えている会社は、当社以外にはない」(岩野氏)という。他のクラウドファンディング事業者の追随に関しても「プロセスが煩雑であり、また現地の事業者の選定も慎重にならざるをえない。かなり難しいのでは」(同)。
 一方で岩野氏は「投資を行う上で円建て商品だけではなく、ドル建て商品も視野にいれるべき」とも、強調した。今回のメニューの多様化は、不動産投資型クラウドファンディングの新たな道を切り開いたとも見ることができる。
 投資家からはまず「運用パフォーマンス」に注目が集まるだろう。それが第2号以降の成否の鍵を握る。




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