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勢いづくシェアビジネス オーナーからは疑問符も

2019.11.18 16:33

 11日、シェアリングエコノミー協会主催で「シェアサミット2019」が開催された。近年、各業界で「シェア」の概念は広がり商機ともなっている。不動産業界でもレンタルスペースシェアの「スペースマーケット」を中心に群雄割拠。ビルオーナーもこの波に乗ろうと自らのビルを利用してシェアリングスペースを開設するケースも増えている。一方でコストパフォーマンスを考慮すると、「?」を出すオーナーもいる。
シェアサミット開催 災害でも概念生かす
 シェアリングエコノミー協会(東京都千代田区)は、11日に「虎ノ門ヒルズフォーラム」で「シェアサミット2019」を開催した。
 冒頭の挨拶には、内閣官房IT総合戦略室シェアリングエコノミー促進室参事官の田邊光男氏が登壇。「モバイルバッテリーの貸与や民泊、ボランティアスタッフへの駐車場貸し出し等災害時にもシェアリングエコノミー活動が採用されるようになった」と広がりを示した。キーセッション「Co―Economy~共創と共助で創るこれからの日本~」は、ココナラ(東京都品川区)代表取締役社長の南章行氏を中心に進行。カルチュア・コンビニエンス・クラブ(東京都渋谷区)代表取締役社長兼CEOの増田宗明氏は2013年から佐賀県武雄市の「武雄市図書館・歴史資料館」を指定管理者として運営していることを引き合いにスピーチ。「市の人口5万人に対して、累計利用者は500万人を突破している。図書館はコストをシェアするものである」と語った。
 実際にシェアリングエコノミーは広がりを見せている。こと不動産業界においても、シェアオフィスからシェアハウス、あるいはパーティなどのためのレンタルスペースもシェアリングにあたる。協会は今年1月に「シェアリングエコノミー領域map」の最新版を発表。不動産業界にあたるものとしては「シェア×空間」という領域になるが、たとえば「シェア×お金」のところに位置する「クラウドリアルティ」は不動産中心のクラウドファンディングサービスとなっている。
ビルオーナーも参入 管理コストに要注意
 このようななかでビルオーナーもシェアリングを所有物件で生かそうとする動きがある。
 よくあるのは貸会議室。多くのオーナーが取り組んでいて、珍しいことではない。特に最近ではテナントが専有部に会議室を設けないことも多いため、テナント向けサービスとしても重宝されているようだ。またレンタルスペースも多い。パーティや撮影などを中心とした需要を狙う。特に撮影での利用が取れれば、収益的にも見合ってくるようだ。
 上野エリアのあるビルでは最近、2階フロアをやはりレンタルスペースとして時間貸しを開始した。セミナーや会議などを中心に需要を拾っていく構えだ。ビルを保有する不動産会社は千葉県内にも複数棟保有するが、このような事業は初。担当者は「今後の不動産事業を考えていく時に、これまでのような賃貸のみの形では企業としてのさらなる成長が難しい面もあります。このような試みを行っていくことで需要を把握し、当社としても新しい収益基盤を作っていきたい」と話す。
 一方でレンタルスペースなどの事業に対して、収益性に疑問符を投げかけるオーナーもいる。千代田区などを中心として都内に10棟以上のビルを保有する東京ストラテジーマネジメント(東京都千代田区)。代表取締役の佐藤朋洋氏によると、保有ビルでレンタルスペース事業を行っていたが、「現在はテナントに貸している」という。「パーティーなどを中心に貸し出していました。運営管理も当社で行っていましたが、お酒が入ると修繕などの管理上のコストがかかってしまいました。これらの管理のコストを考慮したとき、得られている収益では厳しいと思いました。そこで現在では通常のテナント貸しに切り替えています」と言う。
 時代の寵児となっているシェアリングエコノミー。プラットフォーマーは引き続き伸びていく余地があるだろう。現在は東京など大都市圏が中心だが、全国的に利便性などが伝われば大きく拡大できる。一方、オーナーが手を出す場合には管理コストなどを見積もった上で、慎重な判断が求められる。




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