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JLL発表 2020年オリンピック前後市場の見通しとその後の行方

2019.12.02 11:41

 不動産サービスのジョーンズラングラサール(東京都千代田区)は27日、「日本の不動産市場動向 2020年オリンピックを迎える市場の見通しとその後の行方」と題し市況の状況と今後の展望について発表した。
 同社代表取締役社長の河西利信氏は日本のオフィスマーケットについて、「東京市場の賃料はまもなくピークアウトを迎えると見ている。大阪は今、賃料が上がりだす旬の時期。また、変化率(成長の動き=モメンタム)の観点からは大阪・福岡のマーケットが非常に注目している」と述べた。
 同社リサーチ事業部ディレクター・大東雄人氏による解説は以下の通り。
 不動産賃貸市場については、オフィス需要は堅調に推移している。延床3万㎡・20階以上・竣工1990年以降のAグレードオフィスビルについては、東京の都心5区における(成約見込)賃料は上昇しており、坪当たり4万円目前となっている。前四半期比で0・7%増、前年比5%増。賃料が一番高い丸の内・大手町エリアは坪4万7597円。空室率は都心平均0・6%より高い1・5%となっており、賃料が上がっているいくつかのビルでは坪5万円を超える場合もあり、若干成約しにくくなっている動向がみられる。
 2019年既存・新築ビルにはほとんど空きがなく、2020年新築ビルも現時点では8割近くが内定もしくは交渉中であり、空きが出ない状況が見込まれている。
 JLLでは空室率上昇を予測しているが、競争力の弱い移転元の既存ビルが今後大きく空室を抱えてくることで、賃料を下げ、全体のマーケットの平均賃料を下振れさせる要因となるとみている。賃料下落が始まるという悲観的な見通しではなく、あくまで一部のビルの賃料下げにより若干、平均賃料が減少するという見通し。
 今年末に向けてはまだ賃料が上昇するが、2020年末から2021年にかけ、既存ビルが空室を抱えることで二次空室が顕在化することで一部調整局面があるのではないかと考える。  オリンピック後の2021年2022年は供給ビルが限定的であり、空室消化のタイミングと重なることで二次空室もおさまり、再び賃料は2022年以降は回復基調に戻るのではないかとみている。
 新たに拡大しているシェアオフィス市場については、東京のマーケットにはサービスオフィスという転貸ビジネス(賃貸し、区分けしてレンタルオフィスとして第三者へ転貸)は従来から存在していたが、ウィワークがニューヨークから上陸した2018年以降、現在のマーケットは、レンタルオフィスという区切りではなく、共用部分を大きくもうけ、テナント同士が交流できる場を広くとりコミュニケーションを促進するビジネスモデルであるとし、2020年までは拡大していくと予想。需要に関しても、使用の仕方が変わってきており、スタートアップ企業や個人事業主がビジネスコミュニティに入りビジネスチャンスを模索するケースから、現在は大企業がビルを1棟または1フロアを借りるなど成長期に入っているとする。背景には政府が推進する働き方改革も需要の後押しをしているとみている。
 これまでは外資系企業が大きく面積を拡大している局面であったが、需要の拡大も後押しし、既存のテナントにサービスの拡充の一環として展開している国内デベロッパーのプレイヤーもコワーキングオフィスを設ける等、多様化している。
 日本のシェアオフィス市場は急拡大し、頭打ちではないかという指摘もあるが、世界の先進主要国と比べると、トータルのオフィスストックに対する割合等から、東京に関してはまだまだ需要の拡大余地もあるという。




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