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ダイオーズ 環境衛生分野に積極投資 「ナノシードα」に強い需要
2020.06.15 16:27
ブランド展開するアジア各国での展開も視野に
東証一部上場で事業所向けトータルサービス大手のダイオーズ(東京都港区)。昨年、創業50周年を迎え2020年3月期の売上高は360億円にのぼる。更なる成長を見据える同社が現在注力する分野が環境衛生分野。今年4月に展開を開始した空間除菌消臭機「ナノシードα」のレンタル事業は大きな反響と需要を得ている。
米屋からオフィスサービスに グローバルに事業を展開
同社のこれまでの軌跡は、まさにチャレンジを重ねた歴史ともいえる。
創業者である社長の大久保氏は、ダイオーズの前身である実家の米屋を「日本一の米屋」にするため、流通の本場である欧米での単身武者修行をはじめ、帰国後は米屋の御用聞きと配達の機能を活かし、近隣の米屋を束ねて「配達スーパー」を行っていたという。
しかしそれだけで事業を伸ばしていくのは限界があると感じ、「新しい成長戦略の柱が必要だと考えていました。そこでダスキンに加盟し、家庭からオフィス・事業所向けサービスに打って出ました」(大久保氏)
ダスキン加盟店で売上高日本一を達成。更にマットやモップのクリーンケアサービスだけでなく、オフィスサービスへの拡充と「自身がフランチャイザーとして事業を行いたい」との想いで始めたのが「オフィスコーヒーサービス(OCS)」。当時、オフィスでの飲み物はお茶か、インスタントコーヒーが主流だったが、77年に日本で初めてオフィスで本格的なレギュラーコーヒーのサービスを行ったのがダイオーズだった。88年にはダイオーズUSAを設立し、OCSの本場アメリカに逆上陸。現在は米国市場で全米3位、西海岸ではトップシェアを誇る。
国内ではさらに拡大を続けた。これまでダスキン加盟店として展開してきたサービスを、自社でクリーンケア事業として独立。2003年には米国カバーオールと提携。少しさかのぼって2000年以降はアジア各国での展開にも力を入れている。
広範囲を除菌・消臭 様々なウイルスにも抑制効果
そのなかで目下注目を集めているサービスが空間除菌消臭機「ナノシードα」のレンタル事業だ。99・99%の精製水と0・01%の二酸化塩素を配合した水溶液を、特許取得のイオンエンジン4基でナノ化・拡散して空間を除菌、消臭する。広範なウイルスや菌に有効で、これまでのテストでは黄色ブドウ球菌、大腸菌、セラチア菌、クロコウジカビ、肺炎桿菌(はいえんかんきん)、バシラス菌、などで効果を発揮している。特徴としては「ナノシードα」1台で約100畳(約160㎡)の除菌・消臭が可能なことも挙げられる。従来製品では8~10畳を対象としていたが、「ナノシードα」はその10倍以上の広範囲をカバーすることができる。需要も上々だ。大久保氏によれば「既存のお客様を中心に供給しておりますが、予想以上に大きな反響があり、毎日多数の問い合わせをいただいております」とのこと。オフィスや事業所のみならず、最近は医療機関や公共施設からの需要も拡大している。
オフィスサービス大手として、これまで50年にわたり展開してきた実績と、売り切り型ではなく、「継続する必然のあるビジネスだけを積み上げる」という独特なビジネスモデルがダイオーズの大きな特徴であり強みである。昨今「サブスクリプション」が注目されるが、同社では既に50年前からBtoB向けに実践してきたとも言える。
ダイオーズでは、お客様のニーズやフィードバックを聞きながら、今後も環境衛生分野への積極投資を進める方針。新型コロナウイルスや新たなウィルス出現への脅威が高まるなか、これらへの対処は人類や社会にとって継続的な課題だ。大久保氏は「『ナノシードα』は国内供給を強化しながら、その先の展開として『ダイオーズ』ブランドを展開するアジア各国への展開を進めていく予定です」と話す。その展開とともに、この分野での新しいサービス・製品のラインアップの拡充にも期待したいところだ。