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ナックス コロナ禍で深刻度増す店舗の撤退 オーナー負担で原状回復も
2020.06.22 17:34
避けたいテナント破たん 工事費削減でコスト圧縮
資金繰りが悪化する中で、滞納リスクも高まる。売り上げが激減した飲食店などでは「破たん」という結末を迎えるケースも少なくない。オーナーにとっての痛みを緩和するサービスも登場している。
オフィスと比べて、より深刻な影響を被っているのが商業ビルだ。
東京商工リサーチ(東京都千代田区)が出している「『新型コロナウイルス』関連破たん状況」の6月16日17時現在のデータによれば、6月はこの時点で企業の破たんが58件判明し、月間100件ペースで推移。業種別の内訳では飲食業37件でトップ。またアパレル関連(製造・販売)が31件となっている。緊急事態宣言後も続く3密の回避や外出自粛から、中小規模の店舗はもとより体力があるはずの大手チェーンも店舗の撤退の決断を迫られているようだ。
そのなかで工事費用の削減支援を行っているナックス(東京都新宿区)のもとには飲食店から少しでもキャッシュアウトを抑えるために原状回復工事費用削減の相談が来ている。代表取締役の山本隆広氏は「4月頃から内々に相談はありましたが、5月下旬に緊急事態宣言が明けて以降は実際にコンサルティングをするために現地を内見するなど、動きが活発化している」と話す。通常退去する際には3~6カ月前に解約予告をいれて、スケルトン状態に戻すのが通例。しかし、今回のコロナ禍では急速に資金繰りに悪化したため、これらの店舗のなかにはオーナーに対して解約予告期間中の賃料や原状回復工事費用を預け入れている保証金や敷金からの相殺を求めるケースも相次いでいるという。
原状回復費用が保証金・敷金以上の金額の場合、オーナーにとっては持ち出しになる。当然、承服しないケースもある。しかし山本氏は「テナントの資金繰りをちゃんと把握していない場合には注意が必要」と警鐘を鳴らす。もしキャッシュが足りずにテナントが経営破たんなどになった場合、一連の処理が終わるまで保証金やその賃貸部分もオーナーが動かすことができなくなる。
オーナーが原状回復工事を行わなければならない。そのような万一の事態のニーズに応えるためにナックスが始めたのが不動産オーナー向けのテナント撤退に伴う費用負担軽減サービスだ。
「当社は完全成功報酬制で様々な工事の費用削減の支援を行ってきて、2013年に創業して以来、これまで800件の実績があります。工事費の削減割合は平均で23・29%ほどになっています。今回のサービスのきっかけは、当社クライアントのオーナーから実際にご相談がありまして、『今後このようなことで悩むオーナーが増えるのでは』と思い、リリースいたしました」(山本氏)
このような工事費用の削減支援を行える会社は少ない。山本氏はかつて大手のコスト削減コンサルティング会社に所属。そこで建設工事の部門の立ち上げたうえで、独立するに至っている。そのため工事に関しては幅広に支援を行えるのは同社の最大の強みとなっている。
「削減方法も様々で、当社では20ほどのパターンを組み合わせながら行っています。わかりやすい例ではマージンを減らすために直接発注などの手段をとることや、交渉の際にオーナーの代理として当社が介入することです。これまで800件の実績に加えて、その倍以上の見積もりを見てきましたので、適正な費用や交渉のポイントなどは熟知しています」
ただ今回のコロナ禍はビルオーナーも対応は急を要する。店舗から交渉が入れば、早急に相談することがビル経営を守る防衛策になりそうだ。山本氏は「当社のクライアントは店舗を展開する企業が多いので、業界の情報も入手しやすい環境です。実際に交渉が入った時、応じるべきかどうかのアドバイスを行うことが可能なケースもあるでしょう」と話す。
適切な処置を怠った結果、入居したままの経営破たんだけは避けたい。
オーナー向けのサービスとしては工事費用削減がメーンですが、ほかに設備のメンテナンスやエネルギーコストの削減なども行っています。工事と同様に設備メンテナンス費用などでもビルオーナーが知識を有していることは稀です。そのためメンテナンスコストを削減して、ビルの運用利回りを改善することが可能です。当社が所有する北関東エリアにあるビルでも購入後にコスト削減を実施し、結果1%超の実質利回りを改善することに成功しました。
(ナックス 代表取締役 山本隆広氏)