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ビーコン反応等で収集した高度データをAIで解析 デベロッパーとの実証実験も進む
2020.11.24 11:22
どんな人がどのようなお店に立ち寄ったか。そのようなデータが得られれば、施設づくりや街づくり、店舗リーシングなど様々な分野で生かすことができる。2015年創業のunerry(東京都千代田区)が展開している事業はそれを現実のものにしている。
多様な業界から注目 三密対策サービス展開も
同社の展開する事業はリアル行動データを活用したAIマーケティング。具体的にはIoTの一種であるビーコン(Beacon)を活用して収集したデータを2015年12月頃から運用している「BeaconBank(ビーコンバンク)」に蓄積。GPSデータなども併せて用いることで、リアルタイムの混雑度合いや施設内のどのようなフロア、店舗に立ち寄ったか、そこからどのようなことに関心のある層なのかまで、高い精度で推計することができる。このようなビッグデータを活用してこれまでに、店舗内の来棚効果の見える化を実現する「タナクル」や商圏・競合・来店者をAI解析する店舗向けダッシュボード「ショッパーみえ~る」、新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が発令された今年5月には三密対策として「お買物混雑マップ」などを展開している。エリア特性にあわせビーコンとGPSのデータを使い分けることで全国でサービスを展開している。
創業者で代表取締役社長の内山英俊氏は日本のこれまでのビーコンの活用について「設置されるビーコン数とアプリユーザーの両方の規模がないと、限定的な取組しかできない。そのため、ビジネスインパクトが少ないマーケティング施策に終わってしまうことが多かった」と指摘する。大手の商業チェーンなどでは自前のスマートフォンアプリを開発するとともに、店舗内にビーコンを設置しているケースは多い。店舗内に入ればアプリから「お買い得商品」や「催事情報」、限定の「割引チケット」などが配信されることがあるが、ビーコンを活用することでその人が店舗に来たかどうかがわかる。しかしそれでは、自店舗に訪れた自社のアプリを利用する消費者に店内でアプローチ出来る、ということに過ぎない。内山氏はここに課題とビジネスの可能性を見出した。「各社が設置するビーコンをネットワーク化し共通の社会インフラとしての活用を実現すれば、より広範に収集したデータをAIで分析し、マーケティング施策と連動できる。そうすれば、施設や店舗運営にも画期的な効果を発揮できるのではないか、と考えました」と話す。
データ分析し来街者に新体験も 開発やリーシングもメリット
unerryでは現在、屋内外に設置されている約210万個のビーコン反応からデータを収集し、屋外ではGPSも活用する。この210万個という数字は独自開発の特許技術を活かすことで実現した。データとしての価値を高めていくためにはどれくらいの人の行動を取ることができるかも重要。連携しているアプリは累計で1・1億回以上ダウンロードされている。
サービスを利用する企業の業種も拡大傾向にある。積極的なのはリテール系で、商業施設デベロッパーやチェーン店舗展開企業、そして商品を供給するメーカーなどが主。ただ最近では鉄道や航空などの交通系や、街の混雑緩和や回遊性拡大を狙う自治体からの引き合いも増えてきている。
総合不動産デベロッパーとの連携も強化している。例えば三菱地所(東京都千代田区)とは昨年、みなとみらいエリアにて行動データを活用した購買促進を目的に実証実験を実施。そして昨年9月にはオフィス・商業が集積する丸の内エリアで三菱地所と富士通(東京都港区)が設立した「丸の内データコンソーシアム」にunerryも来街者分析の領域で参画。約700個のビーコンをエリア一帯に設置して、分析を行っている。人の流れを示すデータは平時はもちろんのこと、コロナ禍のような急速に人の流れが変化するときもイベントやキャンペーンなどの施策も打てる。他のデベロッパーへの支援も始まっており「不動産業界でも行動データの活用は広がっていくのでは」(内山氏)という。再開発においても「スマートシティ」はキーワードとなりつつある。ライフスタイルやワークスタイルにおいて新しい体験を創造していくためには行動データの活用は必須と言える。またエリアの来街者がどのようなことに興味や関心を抱いているかを知ることができるので、リーシング戦略にも大きな影響を与える。
様々な切り口から注目されるunerry。これから出てくるだろう成果に注目しておきたい。
健全な活用でイノベーションを
人の行動データは様々な場面で活用できる可能性があります。商業施設や店舗においてはこれまでより精度の高い購買層のデータを見ることが可能になりますし、それによってより効果のある販促などを打つことも可能になります。一方で、行動データを知られることに懸念を抱く人がいることも事実です。そこで当社では世界中に26の支部と1600社以上が加盟する位置情報活用事業者のマーケティング事業者団体「Location Based Marketing Association(LBMA)」の日本支部、「一般社団法人LBMA Japan」に設立メンバーとして参画しております。LBMA Japanでは「共通ガイドライン」の更新や監査運用、位置情報活用のマーケティング・サービスの普及活動などを行っていて、業界の健全な発展を推進しています。当社でも適切な利用を徹底することで、行動のビッグデータがもたらすイノベーションを推進していきたいと考えています。