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神楽坂・飯田橋を一大イノベーション創出の拠点に

2021.03.15 11:01

機能的なオフィスでモチベーション向上 投資家と企業が集積する場に
スタートアップを支援するインキュベーション・プログラム充実

起業家への支援プログラム充実 企業の成長ステージに合わせて支援
 神楽坂・飯田橋エリアでベンチャー企業を育てる動きが加速している。昨年10月1日、東京理科大学のグループ会社である東京理科大学インベストメント・マネジメント(東京都新宿区)は、保有する「富士見デュープレックスB‘s」の4階に、産学連携インキュベーション・オフィス「BRIDGE TO SUCCESS THE CROSSPOINT 富士見」をオープンした。内装の設計・施工を行ったのが、フロンティアコンサルティング(東京都中央区)だ。ビジネスに集中できる環境と事業の創造に適したサポートを組み合わせることで、将来の起業家を育てる地盤をつくりだした。

 東京理科大学インベストメント・マネジメント(以下、理科大IM)は2014年の設立。事業パートナーである大学認定ベンチャーキャピタル(以下VC、)である東京理科大学イノベーション・キャピタルのほか、テクノロジー投資に実績があるVC、弁理士、会計士、司法書士と連携し、理科大IMが保有する不動産を活用してベンチャー企業のためのオフィスの提供を行っている。
 大学傘下のインキュベーション施設の場合、その大学の出身者など関係者であることを支援の条件にしているケースも多いが、同社では大学やグループにこだわらずオープンな施設としており、利用者に対し共同研究や技術指導など産学連携的な支援を行う。
 同社では「神楽坂・飯田橋イノベーションエリア」構想を掲げている。「BRIDGE TO SUCCESS THE CROSSPOINT」以外にもベンチャー企業向けのオフィスを手掛ける。インキュベーション事業部長の松本真典氏は「イノベーションを創出するには、パートナーVCや専門家など様々な連携協定先の協力を得ながら、オープンな施設として利用者をサポートしていく必要があります。また現在進行中のプロジェクトとしては、大学近隣にビルを2棟開発しており、企業の成長ステージに合わせた施設とする予定です。将来的に、神楽坂・飯田橋エリアだけでなく、都心を代表するインキュベーション施設として、中身のある活動をしていきたいと考えています。」と説明する。ベンチャーの成長ステージに合わせたオフィスを神楽坂・飯田橋一帯に展開し、更なる起業家の育成とベンチャー企業が集積することが期待される。
 その中核施設として2020年10月1日にオープンした「BRIDGE TO SUCCESS THE CROSSPOINT 富士見」。東京都の認定インキュベーション施設ともなっている。オープンスペースと個室エリアから構成されている。利用者は多岐に及んでいて、起業準備中の社会人、事業会社からのスピンアウト企業、大学発ベンチャーのほか、学生ベンチャー、さらにはパートナーVCも入居している。
バイオフィリックデザイン採用 パフォーマンス向上に効果あり
 インキュベーション・オフィスとして内装にも力を込めた。松本氏は「施設内での居心地の良さは前提として自然なコミュニケーションがとりやすく、集中しやすい環境だと好評をいただいています」と明かす。
 手掛けたのがフロンティアコンサルティングだ。同社では企業のオフィス内装のコンサルティング・施工を手掛けている。今回の内装設計・施工を主導したBC事業部首都圏ユニット長の後藤拓郎氏は「室内のコミュニケーション動線を確保するように意識したと同時に、植物や自然光を多く取り入れられるデザインにして、働く人のパフォーマンスを高めるバイオフィリックデザインを採用しました」と話す。これまで働きやすいオフィスとは何かを追求してきた同社にとって、これまでの知見やノウハウをふんだんに活用することができた形だ。
国内外VCとも連携「飯田橋」駅をインキュベ拠点に
 「神楽坂・飯田橋イノベーションエリア」の中核拠点として誕生した施設。今後、様々な取り組みがなされていくなかで、重要な意味を持っていきそうだ。
 松本氏は「富士見の施設ではベンチャーのなかでも、創業5年ほどであるアーリーステージの企業を支援していきたい」と話す。同社では国内外のVCとの連携も進めている。大学をバックボーンとした強力な起業支援体制を築いていく。
 一方フロンティアコンサルティングにとっても新たな挑戦となりそうだ。後藤氏は「このようなインキュベーション施設やシェアオフィスなどでの事例はまだ少ないです。ここでのノウハウを次の案件でも生かしていきたい」と話した。
 「神楽坂・飯田橋イノベーションエリア」が世界的な大学集積地域である同エリアの特性を最大限に生かし、起業家教育、起業支援施設、ベンチャー企業への投資を兼ね備えた拠点として急速な成長を遂げるポテンシャルがある。これが成功すれば、エリア内でのオフィス需要にも一定のインパクトを与えることになりそうだ。




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