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京都市内10年ぶりの大規模オフィスビル「KRP10号館竣工」 延床3.4万㎡が満室稼働

2021.03.22 15:11

 大阪ガス都市開発(大阪市中央区)が開発し、2月26日に竣工した大規模賃貸オフィスビル「KRP10号館」の1階フードエリアが4月28日グランドオープンする。
 「KRP10号館」が立地するのはJR嵯峨野線「丹波口」駅から徒歩5分の「京都リサーチパーク地区(KRP地区)」内。敷地面積3万8462㎡(KRP地区西地区全体)、延床面積3万4219㎡、建築面積4624㎡、鉄骨造(一部鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造)地上7階地下1階で、事務所、店舗、駐車場を用途とする。京都市内では10年ぶりの供給となる大規模賃貸オフィスビルだ。
 1~7階のオフィスフロアの専有部は天井高約2800mm、専有面積約3700㎡の整形フロア。奥行最大約19mの無柱空間で、働き方に合わせた自由度の高いレイアウトが可能。リフレッシュスペースとして、専有部から直接アクセス可能なテラスも設置した。エントランスはゲートに加えて有人受付を設置し、セキュリティの確保と来客時の柔軟な対応を両立。最上階北側からは、夏の風物詩である送り火で有名な五山を一望できる。なおオフィススペースは竣工時点で満室稼働となっている。
 1階フードエリアには、フードサロン「GOCONC(ゴコンク)」とKRホールディングス(大阪府吹田市)が運営する和食レストラン「かごのや」の2店舗が出店。建物南側にはフードトラックを複数台出店させる計画で、KRP地区の就業者や来訪者、近隣住民にとって、飲食、懇親など、気軽なコミュニケーションに活用できるスペースを提供する。コミュニケーションスペースとしては、飲食・イベントスペースからなるエリアに加えて、1時間単位でWeb予約可能なパーソナルブースとミーティングルームからなるビジネスエリア「GOCONC-biz」を併設する。定例会を「GOCONC-biz」のミーティングルームで開催し、終了後はイベントスペースで音楽を聴きながら懇親会を開くなど柔軟な使い方ができる、気軽なコミュニケーションスペースとする。
 防災対応としては、常用・保安用発電機としてガスコージェネレーションシステムを設置し、停電時に電力供給を行う。建物外部には、災害時に使用できるマンホールトイレを設置している。
 環境にも配慮し、再生可能エネルギーの活用として太陽光発電設備約40kWを設置。また、屋上のトップライトには動力を使わずに下層階まで光を届ける「スカイシャワー」を設置し、エントランスホールや各階共用廊下に自然光を取り入れ、環境負荷の低減と快適な空間を同時に実現している。さらに共用部の一部に京都市産の木材である「みやこ杣木(そまぎ)」を使用。地産地消を推進し、環境負荷の低減を図るとともに、森林の健全な育成に貢献している。
 建物はデザインにもこだわった。外装デザインは五条通に面して建ち並ぶ「KRP10号館」と「KRP9号館」を、連続性のある一体的な都市景観として形成。低層部は「KRP9号館」から連続する2層吹抜の路地空間を設け、1階フードエリアの賑わいが表出するパブリックな空間を計画。高層部は水平庇とガラスを基調としたシンプルな構成の中に、テラスや縦格子をリズミカルに設け、動きのある軽快なファサードとした。
 内装は京都の街並みや町家、茶室などの空間構成や美意識に倣い、陰影や空間の奥行きを生かすデザイン。東西に通り抜けができるエントランスホールを町家の「通り庭」に見立て、中央エリアにトップライトから光が降り注ぐ光庭が設けられている。
 エントランスホールの中央に設置したアルミ鋳物の装飾パネルは、「麻の葉文様」と「四季の草花文様」で構成したデザインとし、京都市内を流れる川と四季の移ろいを表現。壁面装飾のコンセプト作成および文様の選定は、京都市産業技術研究所(京都市下京区)が協力。原型制作・鋳作は大同元年(806年)創業の傳來工房(京都市南区)が請負った。また、ダイナミックな土壁、和紙の装飾壁やサインなどは、伝統的な材料を用いて現代的にデザインし、豊かな空間体験を紡ぐことを目指した。
 四季を楽しめる緑地にはKRP地区が9世紀半ばに貴族の館であったことに因み、源氏物語に登場する「ヤマブキ」、「キキョウ」、「オミナエシ」などを採用。路地空間にはベンチやカウンターとセットとなった植栽帯を多数設け、緑とふれあう場所が用意されている。また、秋の七草のひとつである「フジバカマ」など、絶滅が危惧される植物の保全も図っている。




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