週刊ビル経営・今週の注目記事
毎週月曜日更新
「電通本社ビル」売却検討を開始 希望者から購入意向表明書 890億円で
2021.07.05 11:46
電通グループ(東京都港区)は先月29日、「電通本社ビル」の売却を検討すると発表した。28日に購入希望者から購入意向表明書が提出され、同表明書の条件で売却に向けた検討を開始することが取締役会で決議された。売却後もオフィスフロアやホール、スタジオなどを賃借し、グループによる建物の使用は継続する予定で、本社所在地も変更しない。交渉が順調に進めば年内にも売却する見込み。賃貸借契約の期間は譲渡実行日から11年間を想定している。
グループでは2020年8月より「包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し」に着手。資本効率の向上、財務体質の強化、成長投資資金確保を目的として、保有株式の売却や、遊休資産となっていた「電通八星苑」や「電通鎌倉研修所」の譲渡を実施した。「電通本社ビル」も従前より売却等の可能性について検討を継続していたが、今回の購入意向表明書の提出を受け、売却に向けた検討を行うこととなった。売却益は約890億円を見込む。
同社グループでは売却が成立した場合、毎年のリース契約に伴う費用の増加が見込まれる一方で、建物の減価償却費が削減され、保有を続ける場合に想定される本建物の修繕やテナントの管理等にかかる費用のほか、テクノロジーやワークスタイルの進化に合わせた設備更新費用の計上の必要が無くなるとしている。また売却で得た資金を中期経営計画の達成とその先の持続的成長へ向けて活用することで、企業価値のさらなる向上を加速できるという。具体的な資金使途は売却後に時期を見て発表するとしている。
建物の継続使用の目的には、ニューノーマルにおける多様な働き方、新しい働き方の推進を挙げる。建物をグループ全体の中核となる事業拠点とし、各社が相互に繋がることによりシナジーを創出し、事業を創発・高度化する場と位置づける。また各社の執務・共有スペースを新しい働き方に適した設計のもとに配置することで、従業員がより生き生きと効率的に働ける環境を整備するとしている。
「電通本社ビル」は敷地面積1万7244㎡、建築面積1万2496㎡、延床面積23万1701㎡、地上48階地下5階、SRC造・S造で、2002年の竣工。