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RC造高層住宅対応の耐震改修構法 大成建設が新たに開発

2021.09.13 12:04

 大成建設(東京都新宿区)は、建物中央部に吹抜け空間が配置された鉄筋コンクリート造(RC造)の高層住宅に対応する新しい耐震改修構法「T―レトロフィット制振」を開発した。発生が懸念されている巨大地震による長周期・長時間の地震動に対して、優れた制振効果を発揮することができる。
 一般的に建物の耐震改修では、既存の柱や壁を強化する方法や、新たにブレース(建物変形を防ぐための補強材)やダンパー(地震等の揺れを軽減・減衰させる装置)を設ける方法などがある。しかし高層住宅では、建物規模が大きいためこれらの設置工事が大掛かりになることや、居住者の専有部での工事が難しいなどの課題があり、耐震改修の実施が困難な状況にあった。
 そこで同社は、共用部にあたる建物中央部の吹抜け空間を持つ高層住宅に対し、地震エネルギーを効率的に吸収するオイルダンパーと間柱の集約配置により構築されたフレームを設置するだけで補強できる、新しい耐震改修構法「T―レトロフィット制振」を開発した。
 同構法では、既存建物の梁側面から吹抜け空間に張り出した片持ち梁と階層を繋ぐ間柱により頑強なフレームを構築し、このフレーム内に地震等の揺れを抑えるオイルダンパーを設置する。専有部での工事が不要なため、居住しながら改修工事を実施し耐震性を向上させることができる。また、新たに構築されたフレームは新設した片持ち梁により既存建物と各階を繋げる構造となっており、地面との接触が不要なため建物ロビーや低層部に影響を与えずに施工できる。
 同構法では、長周期・長時間に渡り繰り返す地震動に対しても有効に作用するオイルダンパーを使用。オイルダンパーを上記の頑強なフレームを介して3~5層にまたがるよう設置し、効率よく地震のエネルギーを吸収する。高さ約130mのRC造既存高層建物を対象とした解析事例では、南海トラフ地震で発生が予想される最上階での最大約1・3mの揺れを、同構法の採用により30%以上低減し、90cm以下にできることを確認した。
 今後、同社は発生が懸念される巨大地震に対するRC造の既存高層建物の居住性と安全性の向上を図るため、同構法を用いた耐震改修の提案を積極的に行うとしている。




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