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いちごがソラシドエアと事業連携 「みやざき食農連携プロジェクト」の一環

2021.11.01 11:31

都内ホテルや新設拠点での宮崎の食をPR
 コロナ禍のなかで観光需要は激減。地方は大きな消費力を持つ都市圏へ、どのように地元商品をPRし届けていくかが課題となっている。そのなかで、いちご(東京都千代田区)ならびに同社グループの宮交シティ(宮崎県宮崎市)はソラシドエア(宮崎県宮崎市)との連携を発表。ソラシドエアが取り組む「空陸一貫 高速小口貨物輸送事業」に協力していく。いちごとしては今回の取り組みから運用する不動産の価値向上に取り組んでいくことになる。
 「空陸一貫 高速小口貨物輸送事業」はソラシドエアが拠点を置く宮崎県の農業や畜産業の生産品を、首都圏のレストランやサテライトショップ、その先にいる消費者へ届ける。これまで陸上輸送がメインだったが、宮崎から首都圏までは航空輸送、ラストワンマイルを陸上輸送とすることで、消費者に届くまでの時間を大幅に短縮する。いちごグループは今回の連携の第一弾として、今月1日から月末までホテル「THE KNOT TOKYO Shinjuku」2Fのレストラン「MORETHAN GRILL」にて「宮崎フェア」を開催。宮崎からの直送食材をランチやディナーで体験することができる。来年1月には「宮交シティショッピングセンター」内に宮崎県特産品を中心に商品販売を行う「みやざきフードエクスペリエンス(仮称)」を開設。さらに5月には神奈川県産品を中心とする「いちご横須賀ポートマーケット」を横須賀市の東京湾岸エリアにオープンを予定する。「みやざきフードエクスペリエンス」で三浦半島・湘南をはじめ神奈川の名産品を取り扱ったり、「いちご横須賀ポートマーケット」で宮崎の名産品を取り扱うなどの相互交流を恒常的に行っていく。
 今回の取り組みのきっかけとなったのが宮崎県が主導する「みやざき食農連携プロジェクト(LFP)」。食資源の高付加価値化やポストコロナに対応した新たな活用を目指して、食と農に関する多様な関係者が参画。今年7月には各々の知識・技術・経験などが結集する「LFPプラットフォーム」を設置し、10月28日時点で92社が参画。そのなかのプロジェクトのひとつとして、地元でショッピングセンターを運営する、いちごと宮交シティ、そして航空事業を展開するソラシドエアが手を組んだ。配送には宮崎県を発祥の地とする旭化成の「Fresh Logi(TM)ボックス」を活用する。ボックス内の環境(青果物の輸送・保管温度・湿度・ガス組成など)を詳細に感知し、輸送・保管環境をクラウド上で可視化。ボックス輸送時に外気温25℃の環境下で初期品温5℃の荷物を10時間の間10℃以下に抑える。「高速小口貨物輸送事業」においては先月27日に初日配送が実施され、ボックスを使用することで宮崎などで古くから飼育されてきた日本の在来種である「地頭鶏(じとっこ)」や良質な有機野菜が新鮮なままに輸送された。
 いちごにとって今回の取り組みはこれまでも取り組んできた事業にも通じる。いちご執行役副社長兼COO・宮交シティ代表取締役会長兼社長の石原実氏は「いちごグループはサステナブルインフラ企業として、人を主役に多様化するニーズ、社会課題に不動産を通じて対応し、新たな価値を提供しています。いちごは社会の持続可能性を高めるグループでありたい。それを目指しています。これまでも当社では農業支援に関する事業を行ってきましたが、今回の取り組みを通じて加速させていきたい」と意気込みを示した。今回の取り組みに関連して、来年には「みやざきフードエクスペリエンス」、「いちご横須賀ポートマーケット」の2施設がオープンする。「同様の施設を他の地域でも展開していきたい」と今後の拡大にも努めていく考えを示した。
 不動産業界内でも珍しい取り組み。この一手が地域活性と不動産価値の向上にどのように結びついていくか注目される。




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