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森ビル 最新IoT技術による「土地格付けシステム」独自開発
2022.01.24 11:02
「震度6強から震度7の揺れでも倒壊しない」新耐震基準が1981年に施行され早約40年。建て替えの時期を模索し始める新耐震ビルのオーナーも多い。実装実験が始まったビルの「揺れ性能」データに期待が集まる。
揺れ特性の定量評価で震災リスクを見える化
森ビル(東京都港区)は17日、最新のIoT技術による「土地建物格付けシステム」の独自開発を発表した。国立研究開発法人建築研究所の委託事業「革新的社会資本整備研究開発推進事業(BRAIN)」(※)の一環である同システムは、建物3カ所に設置されたセンサを通じ、地震発生時の揺れ特性の観測データを収集し、各建物の揺れ性能を分析・格付けすることで都市全体の震災リスクを可視化・定量化することが可能となる。
高性能の無線通信機能を持つセンサを多数の建物に設置し、得られた観測データから建物の揺れ性能を相対的に格付けするシステムで、独自に開発したローパワーネットワークセンサは、高さ174mm、幅152mm、単一乾電池駆動で1年以上動く。屋外にも設置可能で小電力の無線通信を使用する。各建物の屋上と建物1階、地盤に設置し観測データはクラウド上で集約。3個1組のセンサを建物所有者に貸し出しデータを蓄積する。分析結果をもとにビル所有者や管理者などが適切な震災対策を実施することで都市全体の震災リスクの低減に貢献する。社会実装として既に港区内のオフィスビル、包括協定を締結している長野県茅野市の小中学校に設置しており2023年1月のサービス開始を目指す。
森ビル都市開発本部計画企画部メディア企画部部長・矢部俊男氏は、「今は持続可能な社会を目指す時代。建物を大切に使い続けていくことが必要になります。測定し続けることで建物の安全指標の新たな形ができるのではないか。センサを使用した分析評価システムにより、ビルのデータを相対比較しながら、健康診断のように揺れ性能を格付けする。基本的には偏差値を出す。偏差値50が平均的な建物の揺れで、偏差値70となると揺れにくい建物となる。建物と地面の両方を評価するので、例えば地面の偏差値40であれば揺れやすい地域となる。『ここは地面が揺れないところだから建物の性能がちょっと古くても大丈夫』というようにきめ細かく指標を生かしていきたい」と語る。
BRAINを主導する国立研究開発法人建築研究所の企画部国際研究協力参事・北田透氏は、「この開発について非常に大きな期待を持っています。社会の安全な暮らしへ向けて、社会実装が有用な形になっていくように今後も支援をしてまいります」とした。
※「革新的社会資本整備研究開発推進事業(BRAIN)」:国立研究開発法人建築研究所が建築・住宅・都市分野の国土強靭化や生産性向上等に資する革新的技術の事業化に向けた研究開発を推進することを目的とした委託研究制度。