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「九段会館テラス」10月1日開業 歴史的価値に最新テクノロジーとウェルネスを付加した新しいオフィスビルを提案

2022.09.12 11:14

 東急不動産(東京都渋谷区)と鹿島建設(東京都港区)は、旧九段会館を保存・復原したオフィスビル「九段会館テラス」を来月1日に開業することを発表。今月8日にはメディア向けの説明会と内覧会を開催した。

歴史とテクノロジーを融合 新築オフィスは9割成約
 「九段会館テラス」は東日本大震災でホール天井が崩落した歴史的建造物「旧九段会館」の建替えプロジェクト。2017年10月に東急不動産と鹿島建設が土地・建物を落札、2019年9月に建替えを着工し、今年の7月に竣工を迎えた。
 創建当時の貴重な技術・素材を生かして保存・復原を行った保存部分と、地上17階地下3階の新築部分で構成される「九段会館テラス」は、敷地面積8765㎡、延床面積6万8036㎡。帝冠様式を最も表している建物北側と東側部分はL字状に保存し、あえて切り分けずに融合するデザインとしている。保存部分には「レトロフィット工法」と呼ばれる中間免震対策や、中性化により劣化したコンクリートの補修対策を実施。外壁のスクラッチタイルに一つひとつ落下防止対策を講じるなど安全・安心な保存活用を実現した。
 「九段会館テラス」では健康経営をサポートする「ウェルネスオフィス」に注力。地下1階にはオーガニック食材を使用したメニューを提供する食堂とクリニックモールを設けたほか、屋上庭園にはオリジナルの健康器具も設置した。
 歴史的要素に最新テクノロジーを融合した点も大きな特徴だ。プラザ・地下1階のフロアには、太陽の位置や天候に合わせて透過率を自動調整するスマートガラスを採用。新型コロナ感染対策としては、ICカード連動エレベーターや吸引式ハンドドライヤーを導入。オフィスワーカーが安心して出社できるシステムを取り入れている。
 記者発表の冒頭挨拶で、東急不動産の取締役常務執行役員都市事業ユニット長の榎戸明子氏は「2019年に着工した本プロジェクトは、新型コロナウイルスの流行による事業環境の変化に対応することが求められました。開発事業者として『来る意味のあるオフィス』、『来たくなるオフィス』の実現のため、新しい形の職域食堂やクリニックモール、働きながら体を動かしたりストレッチの出来る健康家具など、ここで働くワーカーのみなさんが安心して健康的に生活ができる仕掛けをご用意いたしました。これからはこの『九段会館』の歴史の重みを受け止めながら運営してまいりたいです」と語った。
 尚リーシングは好調で、新築オフィスは9割が成約、保存部分のクラシックオフィスは半分が成約の状況という。歴史と先進性が融合したオフィスビルの開業が待たれる。




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