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【週刊不動産経営】木造賃貸オフィスビル「OS melia」竣工 

2024.06.24 11:15

 6月初旬に竣工を迎えた新築木造賃貸オフィスビル「OS melia」。事業主は大正14年創業、来年度で創業100年を迎える東中野が地元の不動産賃貸事業者・大島土地建設(東京都中野区)。建築設計・監理や不動産企画・仲介はブルースタジオ(東京都中央区)が手掛けた。
 「(仮称)まちの大家による都市木造普及促進計画『東中野ペンシルビル木造建替プロジェクト』」として誕生した「OS melia」は、既存ビルの建替え事業でありながら、中小規模における木造ビル普及の建築モデルでもある。目的はまちの大家(小規模不動産オーナー)たちによる、都市木造の面的普及促進計画。不動産賃貸業界において大多数を占める個人や中小規模事業者でも計画可能な、中小規模木造ビルの建築・不動産収益事業モデルの汎用化と普及を目的に行った。加えて本質的な都心環境の面的な木造化促進も目指し、都市を第2の森へ繋げたい想いがある。
 昨今事業用物件でも木造化や木材利用が増えている。しかしその大半は、大手ゼネコンが手がける認定工法(材料)や独自技術による高層建築物。片や都内のオフィスビルの約7割は2000㎡未満の中小規模。これらを踏まえ、都市の木造化を進める上で中小の建築会社や工務店、不動産事業者でも対応可能な木造建築モデル完成が急務となっていた。ブルースタジオは同プロジェクトが「小規模オフィスビル」の建替えモデルになると推測。特に間口は10m以下で、間口よりも奥行きが深いビル。規模は10階建て未満(31m未満)。これは31mを基準に、隣地斜線制限や構造計算・消防設備における制限が異なるため。延床面積は2000㎡未満で、1フロアあたりの貸床面積は200㎡未満を対象に想定している。
 また資産運用モデルとしても画期的。まちの不動産オーナーは大島土地建設。設計はブルースタジオ。木材生産地の部材メーカーは江間忠木材(東京都中央区)。工務店は礎コラム(東京都港区)。
 SDGsファイナンスへ積極的に取り組む地域密着型の金融機関・西京信用金庫(東京都新宿区)も携わる。技術的助言では、エネルギーの専門家・研究者としてTEI Japan(東京都中央区)。木構造や防災面ではKAP(東京都千代田区)と桜設計集団(東京都渋谷区)。今回信用金庫が関わったことで、地域価値にも資する資産運用モデルとしても期待されている。理念そのものが不動産商品価値となり、それに共感するテナントも含めて、今後のビル建替えと地域経済発展のモデルとなるからだ。
 「OS melia」は地上1~4階までが鉄骨造、5~8階が木造の地上8階建て。敷地面積は152・38㎡で、延床面積は714・46㎡。木造箇所は1時間耐火構造で、短手方向にラーメン骨組、長手方向にブレース骨組を採用。構造躯体(主要構造部)に耐火被覆と側面仕上げ材を施し、その外側に構造躯体(耐震要素)を現わした。下層階鉄骨造部分は、天然木材仕上げの外壁を採用している。また高断熱や日射遮蔽などによるエネルギー損失の低減を実施。自然採光の有効利用、人感感知制御等による照明エネルギーの削減も採用した。ビル壁面には太陽光パネルの設置を計画中。「ZEB Ready」の認証とBELSの5スターの取得を目指している。ちなみに国土交通省の「サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」の認定を受け、合計約2320万円の補助金を受けた。
 6月6~7日には内覧会を実施。7日夕方にはレセプションパーティーも開催し、多くの人・企業が足を運んだ。入居開始は7月1日からで、1階のみ飲食店舗区画として募集する。空中階はオフィス仕様。8階の木造フロアは、木造+眺望の良さも相まって人気が高いと思われる。同事業に興味を持っている不動産事業者や大手不動産会社も多いことから、今後大島土地建設とブルースタジオは、様々な企業やプレイヤーも巻き込みながら、都市の木造化を進めていく姿勢だ。

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